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第1回 検査と診療 関西フォーラム「腎疾患診療のアップフロント」

第1回 検査と診療 関西フォーラムは終了いたしました。
多数のご参加誠にありがとうございました。
第1回 検査と診療 関西フォーラム「腎疾患診療のアップフロント」

<大阪府医師会認定生涯教育講座・日臨技生涯教育研修制度対象講座>

日時 : 2014年 7月26日(土) 14:00〜18:30
会場 : 新大阪ワシントンホテルプラザ(2Fイベントホール レ・ルミエール)
 大阪市淀川区西中島5-5-15 TEL:06-6303-8111
入場 : 無料

世話人

槇野 博史 先生(岡山大学病院長)

申込方法

参加ご希望の方は「参加申込書」をダウンロードし、FAXにてお申し込みください。
※講演会へのご参加は会場の都合により、医療施設及び検査センター関係者のみとさせて頂きます。

講演 (14:10〜16:50)

  1. IgG4関連疾患の検査診断[抄録を見る▼]
  2. 西 慎一 先生(神戸大学大学院腎臓内科 教授)
    講演熊谷 俊一 先生(神鋼会総合医学研究センター センター長)

  3. 強皮症腎クリーゼの病態と治療[抄録を見る▼]
  4. 桑名 正隆 先生(慶應義塾大学医学部リウマチ内科 准教授)
    講演杉山 英二 先生(広島大学病院リウマチ・膠原病科 教授)

  5. ANCA関連血管炎に関する検査と診療[抄録を見る▼]
  6. 有村 義宏 先生(杏林大学第一内科学教室腎臓・リウマチ膠原病内科 教授)
    講演土橋 浩章 先生(香川大学医学部内分泌代謝・血液・免疫・呼吸器内科 講師)

情報交換会 (17:00〜18:30)



<主催>
関西フォーラム
<共催>
株式会社エスアールエル 株式会社LSIメディエンス 株式会社ビー・エム・エル
株式会社ファルコバイオシステムズ 株式会社医学生物学研究所
<後援>
一般社団法人日本衛生検査所協会


1. IgG4関連疾患の検査診断

西 慎一
神戸大学大学院腎臓内科
 IgG4関連疾患は,膵臓,唾液腺,涙腺,肺,腎臓,リンパ節などさまざまな臓器にIgG4陽性形質細胞が多数浸潤し,慢性期には傷害臓器の線維化を生じる疾患である.良性疾患と認識されているが,傷害臓器の機能不全を呈することもある.
 この疾患は,炎症性腫瘍,アレルギー性疾患,自己免疫性疾患など多彩な性格を呈する.そのため,血液検査にも様々な異常所見が認められる.炎症性腫瘍の性格としては,CRPが弱陽性である症例が認められる.また,アレルギー性疾患の性格としては,血中IgE上昇,好酸球増多所見が認められる.しかし,全例これらの検査所見が異常値を呈するわけではなく,異常値を示す症例は一部である.自己免疫性疾患の性格としては,全ての症例が血中IgG,サブクラスとのIgG4レベルの上昇を示し,低補体血症,抗核抗体陽性所見が過半数の症例に認められる.IgG4は135 mg/dLを超えて上昇していることが一つの診断基準となっている.その他のサブクラスであるIgG1,IgG2,IgG3も全体的に上昇していることが一般的である.血中IgGに対するIgG4の比率が10%を超える (IgG4 / IgG > 10%)という指標も一つの診断基準として利用されることがある.ただし,免疫グロブリンのIgM,IgAレベルは一般的には正常が軽度上昇に留まることが多い.
 鑑別診断としては,シェーグレン症候群,キャッスルマンリンパ腫,血管炎,悪性腫瘍,サルコイドーシスなどが挙げられる.従って,症例によっては,これらの疾患を鑑別するための特異的診断マーカーも検査することも必要である.例えば,SS-A,SS-B,IL-6,MPO-ANCA,PR3-ANCA,ACEなどの血中レベルを検索することになる.
 このIgG4関連疾患は,決して血液検査のみから診断できるものではなく,基本的に画像診断がその診断感度を挙げる検査となる.特にCT検査が診断には有用である.特徴的な所見としは,傷害臓器にびまん性病変,単純結節性病変,多結節性病変などがみられるが,通常傷害臓器は1臓器にとどまることはなく,多数の傷害臓器病変が同時に認められる.また,炎症性疾患の性格があることから,PET検査も診断に有用と言われている.
 本講演では,現在利用されているIgG4関連疾患の診断基準も紹介し,この疾患の非常に興味深い性格を解説したい.

2. 強皮症腎クリーゼの病態と治療

桑名 正隆
慶應義塾大学医学部リウマチ内科
 強皮症は皮膚および内臓諸臓器の線維化,末梢循環障害,核抗原に対する自己抗体産生を主徴とする結合組織疾患で,いまだ根治的な治療法のない難治性疾患である.特に間質性肺疾患,肺動脈性肺高血圧症,腎クリーゼ(renal crisis),心筋障害は死因として重要である.腎クリーゼは急性経過で出現する進行性の腎機能障害で,典型的には高血圧(多くは悪性高血圧)を伴い,無治療であれば致死性の病態である.検査所見上,クームス陰性溶血性貧血,破砕赤血球,血小板減少を伴うことが多く,血栓性微小血管障害(TMA)を併存する.アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)の導入により生命予後は改善されたが,現状でも透析療法を必要とする例や死亡例が少なからず経験される.その本態は腎弓状動脈,小葉間動脈を中心とした小動脈の内膜線維化による内腔狭窄に加えて,腎血流減少とレニン-アンジオテンシン系の活性化による悪性サイクルによる.病理組織学的には腎小血管の血管内皮の増殖,ムチン沈着を伴う線維化が特徴で,”onion-skin lesion”と呼ばれる.経過が長い例では二次的な糸球体や間質の虚血性変化,血栓形成を有することが多く,時に炎症性細胞浸潤やIgG,補体の沈着を欠くフィブリノイド壊死を伴う.ただし,”onion-skin lesion”は腎クリーゼを発症していないSScにも高率にみられるため診断的意義に乏しい.
 腎クリーゼは強皮症の2-10%でみられるが,民族による頻度の差が大きい.特に北米やイギリスで頻度が高いが,フランス,イタリア,日本で少ない.多くは罹病期間4年以内の発症早期のびまん皮膚硬化型SSc(dcSSc)で,皮膚硬化が急速に進行する時期に一致して発症する.限局皮膚硬化型SSc(lcSSc)での発症はきわめてまれで,lcSScとしての報告例の中にはdcSSc早期で皮膚硬化が肘,膝より近位まで進展してない例が誤って分類されている場合が含まれる.心筋病変や心嚢液貯留などの心病変,貧血,血小板減少の新規発症もリスク因子となる.抗RNAポリメラーゼIII抗体は強皮症の診断に有用であるだけでなく,腎クリーゼときわめて強い関連を示し,この現象は世界共通である.抗RNAポリメラーゼIII抗体陽性例における腎クリーゼの発症頻度は15-59%と報告され,同抗体陽性例はきわめて高いリスクを有する.酵素免疫測定法で測定した抗RNAポリメラーゼIII抗体レベルの上昇に一致して腎クリーゼが発症することがある.興味深いことに,腎クリーゼの発症頻度の高い北米,イギリスでは強皮症にける抗RNAポリメラーゼIII抗体の陽性頻度が高く,抗セントロメア抗体,抗トポイソメラーゼⅠ抗体の陽性頻度とほぼ同等である.一方,日本では抗セントロメア抗体,抗トポイソメラーゼⅠ抗体の陽性頻度が20-30%に対し,抗RNAポリメラーゼIII抗体の頻度は5%程度と少ない.薬剤投与が腎クリーゼを誘発することが知られており,特に副腎皮質ステロイドとの関連は多くのコホート研究や症例対照研究で示されている.特にプレドニゾロン換算で15 mgを越える量の投与が6ヶ月以内の腎クリーゼの発症リスクを3-24倍高める.また,シクロスポリン,タクロリムスなどカルシニューリン阻害薬,非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)や利尿薬などの腎血流を低下させる薬剤も腎クリーゼのリスクを高める.
 典型的には1週間以内に出現もしくは悪化した高血圧で発症し,悪性高血圧のレベルまで上昇することが多い.それに伴って頭痛やけいれんなどの高血圧脳症,うっ血性心不全,眼底出血による視力障害が出現することがある.治療開始が遅れると脳出血や心不全が死因となる.また,腎機能は急速に悪化し,1ヶ月以内に透析導入を要する腎不全に至る.時に腎クリーゼが強皮症の初発症状となる場合がある.血液検査ではレニン活性の著増が必発である.貧血,破砕赤血球増加,血小板減少,LDHや間接ビリルビン上昇などのTMA所見を伴うことが多いが,出血症状をきたすレベルまで血小板が減ることはまれである.一方,10-20%は高血圧を呈さず,正常血圧腎クリーゼ(normotensive renal crisis)と呼ばれる.ステロイド投与下での発症,心筋拡張障害や心嚢液貯留など有意な心病変を伴うことが多い.高血圧を呈する典型例に比べて予後不良であるが,発見の遅れがその要因である可能性も指摘されている.正常血圧の場合,急速進行性の腎機能障害を呈する顕微鏡的多発血管炎(MPA),TMA/溶血性尿毒症症候群(HUS)との鑑別がきわめて重要である.リスク因子からある程度の鑑別が可能で,腎クリーゼは発症早期のdcSScまたは抗RNAポリメラーゼIII抗体陽性がリスクになるのに対し,MPAは罹病期間が10年を越える罹病期間の長いdcSSc,lcSSc両者でみられ,TMA/HUSはいかなる罹病期間,病型でも発症しえる.正常血圧であっても腎クリーゼではレニン活性が上昇することがほとんどである.また,抗好中球細胞質抗体(ANCA)の検出がMPAの診断に有用であるが,強皮症に伴うTMA/HUSではADAMTS13活性の著減,ADAMTS13に対するインヒビター(自己抗体)は通常みられない.典型例では臨床症状のみで診断可能であり,かつ腎クリーゼに特異的な腎組織所見がないため腎生検は必要ないが,非典型例,特に正常血圧の場合は腎クリーゼ以外の病態の除外に腎生検はきわめて有用である.
 かつては降圧薬の大量,併用療法でも腎クリーゼによる腎機能の悪化を食い止められず,救命のためには両腎摘出と維持透析以外確実な方法はなかった.1979年にACEIの最初の著効例が報告され,比較試験による検証なしにその使用が急速に普及した.ただし,コホート研究でACEIの使用により1年生存率が15%から76%まで著明な改善が示され,ヨーロッパリウマチ学会(EULAR)の治療レコメンデーションでもACEIの使用は強く推奨されている.半減期の短い製剤を少量(通常量の1/4〜1/8)から開始し,血圧をできるだけ速やかに正常域まで下げることを目標に2-3日毎に増量する.腎機能が悪化して透析導入しても継続する.ACEIを継続すれば2年以内に30-40%が透析から離脱できるからである.アンジオテンシン受容体阻害薬(ARB)やレニン阻害薬がACEIでコントロール不良例において有効であったとの報告があるが,その逆も報告されていることから,使用経験の豊富なACEIを第一に選択すべきである.ACEI単独で降圧効果が不十分な場合はカルシウム拮抗薬,α遮断薬を併用するが,利尿薬,β遮断薬の使用は避ける.コントロール不良例でエンドセリン受容体拮抗薬の有用性が期待され,その効果を検討する臨床試験が実施されている.腎クリーゼの予防に有用な薬剤としてカルシウム拮抗薬が報告されている.一方,ACEI,ARBは腎クリーゼ予防に有用でないばかりか,これら薬剤投与下で発症した腎クリーゼは死亡リスクが高いことが示されている.特にリスクの高い発症早期のdcSSc,抗RNAポリメラーゼIII抗体陽性例では,いかなる理由でもACEIを投与すべきでない.
 生命予後不良の予測因子として男性,高齢,心不全の併存,治療開始時の血清クレアチニン>3 mg/dL,正常血圧が知られている.現状でも腎クリーゼによる死亡率は2年で15%,5年で30-40%と不良である.特に診断時すでに腎機能障害の進行例で予後が悪いことから,早期発見,ACEI開始が予後改善に有用なことはいうまでもない.特にリスクの高い発症4年以内で皮膚硬化が進行するdcSSc,抗RNAポリメラーゼIII抗体陽性例では自己血圧測定を指導し,3日以上の血圧上昇があれば速やかに受診することを指示し,早期発見に努めることが重要である.実際にこのような試みにより予後改善効果が示されている.
 強皮症腎クリーゼはいまだ予後不良の難治性病態である.抗RNAポリメラーゼIII抗体の測定が保険収載されたことから,腎クリーゼの高リスク例の把握が容易になった.これら症例では腎クリーゼの早期発見に努め,発症時にACEIを適正に使用することで,さらなる予後改善が期待できる.

3. ANCA関連血管炎に関する検査と診療

有村 義宏
杏林大学第一内科学教室 腎臓・リウマチ膠原病内科
 抗好中球細胞質抗体(anti-neutrophil cytoplasmic antibody: ANCA)関連血管炎は,全身性血管炎に属する疾患群である.このANCA関連血管炎は多臓器障害性疾患で,診断が遅れれば生命予後不良の難治性疾患である.疾患名にANCAという名称が含まれているように,本症と診断するにはANCAの測定は必須である.まさに,ANCAの測定法が開発されなければ存在し得なかった疾患概念である.ANCA測定が可能になったことにより,血管炎の概念は大きく変貌し,早期診断法や治療法が進歩し,予後も著しく改善した.
 ANCAは,1982年オーストラリアのDaviesらにより,正常好中球を基質とした蛍光抗体法を用いて,巣状・分節性壊死性腎炎の患者血清中に初めて同定された.当初,ANCAはアルボウイルス感染例に多く同定されたことなどより,感染症との関連が考えられていたが,1985年にオランダのWoudeらにより多発血管炎性肉芽腫症(Granulomatosis with polyangiitis: GPA)の診断に有用であることが報告され,一躍注目されるようになった.その後,蛍光抗体法によるANCAにはcytoplasmic patternとperineuclear patternの2種類あること,血管炎に関連する主要なANCAには,myeloperoxidase (MPO)を標的抗原とするMPO-ANCAとproteinase 3(PR3)を標的抗原とするPR3-ANCAの2種類があることが明らかとなった.ANCA測定法も酵素抗体法が開発され,日常診療に利用されるようになり,その精度も飛躍的に向上した.最近では,化学発光酵素免疫測定法も開発され広く臨床応用されるようになった.しかし,一方では,測定法の違いによる偽陰性・抗体値の相違,ANCA陰性の再発例やANCA陰性ANCA関連血管炎の存在が問題となっている.
 本フォーラムでは,ANCA測定法の進歩と課題,およびANCA関連血管炎におけるANCA測定の意義などについて,昨年発表された血管炎の新分類(Chapel Hill Consensus Conference:CHCC 2012)の話題も含め発表する.

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会場:
新大阪ワシントンホテルプラザ (2Fイベントホール レ・ルミエール)
大阪市淀川区西中島5-5-15 TEL:06-6303-8111
JR新大阪駅正面口より徒歩約3分