化学療法の開始前に、RAS及びBRAF遺伝子変異の有無に応じた治療方針の個別化が可能に
MEBGEN RASKET™-Bキットは、RAS及びBRAF遺伝子を同時に検出することができ、大腸癌治療方針の個別化を可能にします。
癌組織から抽出したゲノムDNA中のRAS(KRAS及びNRAS)遺伝子変異の検出(セツキシマブ(遺伝子組換え)又はパニツムマブ(遺伝子組換え)の結腸・直腸癌患者への適応判定の補助、大腸癌における化学療法の選択の補助)
「使用目的に関連する使用上の注意」
RAS遺伝子変異検査について、大腸癌における化学療法の選択の補助に用いる場合には、切除可能な結腸・直腸癌における術後補助化学療法の選択の補助に用いること。
多くの大腸癌でEGFR(Epidermal Growth Factor Receptor)が高発現していることが知られており、切除不能な進行・再発の大腸癌の治療薬として抗EGFR抗体薬(セツキシマブ(遺伝子組換え)又はパニツブマブ(遺伝子組換え))が使用されています。しかし、RAS(KRAS/NRAS)遺伝子エクソン2(コドン12、13)、エクソン3(コドン59、61)、エクソン4(コドン117、146)のいずれかに変異を有する場合、抗EGFR抗体薬の治療効果が期待できないことが示されたため、治療前にはRAS遺伝子検査が広く行われています2, 6)。
「大腸癌治療ガイドライン医師用」6)において、切除可能大腸癌における術後補助化学療法は、個々の患者で想定される再発リスクと期待される効果に基づいて治療選択を行うことが推奨されています。RAS遺伝子変異は、その再発リスクを予測する因子の候補と考えられており、「大腸がん診療における遺伝子関連検査等のガイダンス」2)の基本的要件にも、切除可能大腸癌において、再発リスクに応じた治療選択を目的として、補助化学療法の開始前にRAS遺伝子変異検査を実施することが記載されています。
癌組織から抽出したゲノムDNA中のBRAF遺伝子変異(V600E)の検出(大腸癌における化学療法の選択の補助)
「使用目的に関連する使用上の注意」
BRAF遺伝子変異検査について、大腸癌における化学療法の選択の補助に用いる場合には、治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌における治療選択の補助又は結腸癌における術後補助化学療法の選択の補助に用いること。
結腸・直腸癌では、RASの下流にあるBRAFにも遺伝子変異が認められ、そのほとんどがエクソン15にあるコドン600のバリンがグルタミン酸へ変化するV600E変異であることが知られています。また、BRAF遺伝子変異(V600E)を持つ切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌は予後不良であり、病勢進行が早く、早急な化学療法開始を必要とする患者も少なくないものの、FOLFOXIRI+ベバシズマブ療法の有効性が示されています7, 8)。本邦では、化学療法前におけるBRAF遺伝子検査の必要性が「大腸癌治療ガイドライン 医師用」6)に、切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌の化学療法の方針決定のため、治療前にBRAF遺伝子変異(V600E)を測定することが「大腸がん診療における遺伝子関連検査等のガイダンス」2)に記載されています。そして、FOLFOXIRI+ベバシズマブ療法は、臨床試験においてその有用性が示されたことから7, 8)、「大腸癌治療ガイドライン 医師用」6)でも切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌に対する一次治療の一つとして推奨されています。
さらに、国際共同第Ⅲ相試験(ARRAY-818-302試験)において、一次治療又は二次治療後に増悪したBRAF遺伝子変異(V600E)を有する治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌患者665例(日本人患者20例を含む)を対象に、FOLFIRI及びセツキシマブの併用投与又はイリノテカン及びセツキシマブの併用投与(対照群)を対照として、①エンコラフェニブ、ビニメチニブ及びセツキシマブの併用投与(3剤群)、又は②エンコラフェニブ及びセツキシマブの併用投与(2剤群)の有効性が検証されました。その結果、対照群に対して、3剤群及び2剤群は、全生存期間を統計学的に有意に延長し、奏効率は統計学的に有意に高値でした。
以上のことから、BRAF遺伝子(V600E)変異の有無に応じて、エンコラフェニブ及びセツキシマブの併用療法、又はエンコラフェニブ、ビニメチニブ及びセツキシマブの併用療法の適応を判断することは、臨床的有用性が高いと考えられています。
また、「大腸癌治療ガイドライン 医師用」6)では、切除可能大腸癌における術後補助化学療法は、個々の患者で想定される再発リスクと期待される効果に基づいて治療選択を行うことも推奨されています。BRAF遺伝子変異(V600E)は、その再発リスクを予測する因子であると考えられており、「大腸がん診療における遺伝子関連検査等のガイダンス」2)の基本的要件において、検査の実施が推奨されていることから、本検査の臨床的有用性は高いと考えられます。
* FOLFOXIRI:5-FU/LV、オキサリプラチン、イリノテカン
* FOLFIRI:5-FU/LV、イリノテカン
癌組織から抽出したゲノムDNA中のBRAF遺伝子変異(V600E)の検出(大腸癌におけるリンチ症候群の診断の補助)
主にミスマッチ修復(MMR)遺伝子の生殖細胞系列変異を原因とする常染色体優性遺伝性疾患であるリンチ症候群は、患者及び家系内に大腸癌、子宮内膜癌をはじめ、さまざまな悪性腫瘍が若年発症することから、その診断は臨床的に重要であると考えられます。
「遺伝性大腸癌診療ガイドライン」1)では、リンチ症候群が疑われる大腸癌の診断の手順において、マイクロサテライト不安定性(MSI)検査により高頻度MSI(MSI-H)又は免疫染色でMMRタンパク質の消失が認められた症例に対して、腫瘍組織のBRAF遺伝子変異(V600E)検査を実施することが記載されています。
リンチ症候群の大部分の大腸癌ではMSI-Hを示しても、BRAF遺伝子変異(V600E)はほとんど認められない**ことが報告されています。MSI検査にてMSI-Hが認められた場合、BRAF遺伝子変異(V600E)検査を実施し、変異陽性であればリンチ症候群がほぼ否定できるため、確定診断に進まなくてよい患者を選択することが可能となり、大腸癌におけるリンチ症候群の診断の補助として有用です。
** PMS2遺伝子に変異があるリンチ症候群の大腸癌の一部では、BRAF遺伝子V600E変異が認められることが報告されており、注意が必要であることが、「遺伝性大腸癌診療ガイドライン」1)に記載されています。
Exon 2 | Exon 3 | Exon 4 | |||
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Codon 12 | Codon 13 | Codon 59 | Codon 61 | Codon 117 | Codon 146 |
G12S | G13S | A59T | Q61K | K117N | A146T |
G12C | G13C | A59G | Q61E | A146P | |
G12R | G13R | Q61L | A146V | ||
G12D | G13D | Q61P | |||
G12V | G13V | Q61R | |||
G12A | G13A | Q61H |
Exon 2 | Exon 3 | Exon 4 | |||
---|---|---|---|---|---|
Codon 12 | Codon 13 | Codon 59 | Codon 61 | Codon 117 | Codon 146 |
G12S | G13S | A59T | Q61K | K117N | A146T |
G12C | G13C | A59G | Q61E | A146P | |
G12R | G13R | Q61L | A146V | ||
G12D | G13D | Q61P | |||
G12V | G13V | Q61R | |||
G12A | G13A | Q61H |
Exon 15 |
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Codon 600 |
V600E |
◎ 検体の選定には下記の推奨検体を参照してください。
FFPE*1 組織切片(推奨検体) |
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同時に作製した HE 染色*2 標本により、腫瘍細胞が含まれていることを確認してください。
推奨するFFPE*1組織切片の作製条件 ◎ できる限り壊死部分を除いた腫瘍組織 ◎ 固定液:10%中性緩衝ホルマリン溶液※ ◎ 固定時間:6~48時間 ◎ 切片の厚さ:5〜10 µm 数枚(DNA は50~100 ng/テスト使用) ※ 20%でも可です。酸性(非緩衝)ホルマリン溶液で48時間以上の固定は増幅不良を起こす場合があります。 |
Code No. | GS-D0471 | 包装単位 | 96回 |
測定原理 | PCR-rSSO法 | 貯蔵方法 | -15℃~-35℃ |
構成品 | マスターミックス、Taq DNAポリメラーゼ、ウラシルDNAグリコシラーゼ、野生型コントロールDNA(10倍濃縮品) | ||
セット品 | |||
関連製品 |
区分 | 体外診断用医薬品 | ||
保険点数 | *保険収載品 |
備考 | 冷凍品 この試薬は、解析ソフトウェア(Luminex® 解析ソフトウェア UniMAG™ v2)を使用することで迅速に判定結果を得ることが可能です。 |
分野 (測定項目) | 遺伝子 ( RAS遺伝子変異検出 / BRAF遺伝子変異検出 ) |