自己免疫性水疱症は、表皮細胞間や表皮と真皮間の接着が自己抗体により障害されることにより、水疱やびらんが形成される疾患で、天疱瘡、水疱性類天疱瘡、後天性表皮水疱症などがあります。天疱瘡(Pemphigus)は中年期以降の人に後発し、粘膜及び皮膚の弛緩性水疱とびらん面を特徴とする尋常性天疱瘡(PV)と小水疱と落屑を伴う紅斑を特徴とする落葉状天疱瘡(PF)に分類されます。
天疱瘡患者に血清中にはIgGクラスの抗体表皮細胞間抗体がみとめられ、抗原蛋白はデスモソームに存在し、PV抗原、PF抗原はそれぞれデスモグレイン3(Desmoglein 3:Dsg3)、デスモグレイン1(Desmoglein 1:Dsg1)と命名されています。半数以上のPV患者血清中には抗Dsg3抗体のみならず抗Dsg1抗体も存在します。類天疱瘡(Bullous pemphigoid:BP)は、主に高齢者に好発し、臨床的には、そう痒を伴う蕁麻疹様紅斑、および緊満性水疱が特徴です。類天疱瘡患者血清中に存在する自己抗体の標的抗原は、表皮基底細胞と基底膜を結合するヘミデスモソームに存在するBP180とBP230です。リコンビナントBP180NC16aを基質としたELISAは、約80%の症例で陽性となり、ELISAスコアが病勢と平行に推移するため、病勢のモニタリングにも有用です。後天性表皮水疱症(Epidermolysis bullosa aquisita:EBA)は、中高年で好発し、機械的刺激により生じる水疱やびらんを主な症状とします。患者血清中に見られる自己抗体の標的抗原は、基底膜部と表皮をつなぐ係留線維の成分であるタイプVIIコラーゲンです。