抗デスモグレイン3抗体(抗Dsg3抗体)は尋常性天疱瘡の患者血清中に見出される自己抗体です。
尋常性天疱瘡は、ほぼ全身に弛緩性水疱及び有痛性の糜爛を生じ、時に死に至る重篤な自己免疫性水疱性疾患です
1)。
天疱瘡患者の血清には表皮細胞膜抗原に対する自己抗体が存在し
2)、患者血清から精製したIgGを新生仔マウスに注入すると、18時間から72時間後にマウスの皮膚に天疱瘡様病変が誘導されることから、この自己抗体自身が病因的役割を担うことが確認されています
3)。しかし、長い間標的抗原が不明であったため、これらの自己抗体を特異的に定量することは困難でした。天谷らは、培養表皮細胞から作製したcDNA発現ライブラリーを患者血清中に含まれる自己抗体で免疫スクリーニングし、尋常性天疱瘡抗原蛋白質のcDNAを単離することに成功しました
4)。
また、その塩基配列の解析により、尋常性天疱瘡の抗原蛋白質はカドヘリン型の細胞接着因子であり、デスモソームと呼ばれる細胞接着装置に存在するデスモグレイン3であることが明らかにされました
4)。さらに、天谷らは、デスモグレイン3蛋白質本来の立体構造を正しく反映した組換え蛋白質の作製に成功し、作製された組換え蛋白質は、患者血清中の自己抗体と特異的に反応することが示されました
5)。
本品は本来の立体構造を正しく反映した組換え蛋白質を抗原として用いており、特異的に抗デスモグレイン3抗体を測定することができます。また、抗体価はある程度病勢を反映するといわれています
6)。
ステイシア MEBLux™テスト Dsg3は、化学発光酵素免疫測定法(CLEIA法)によって血清中の抗デスモグレイン3抗体を測定する試薬です
7)。
ELISAを用いて、抗Dsg1抗体、抗Dsg3抗体を高い感度および特異的に測定することにより、天疱瘡の病型の血清学的鑑別が可能になり、それぞれの病型が独自の抗体プロファイルを持つことが明らかにされました。