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自己免疫疾患検査

MSAs|筋炎特異的自己抗体の使い方

監修:日本医科大学大学院医学研究科 アレルギー膠原病内科学分野
教授 桑名 正隆 先生


多発性筋炎・皮膚筋炎に特異的な自己抗体群「MSAs」

自己免疫疾患の診断に際して、疾患特異的自己抗体が有用であることが知られていましたが、多発性筋炎・皮膚筋炎(PM/DM)の診断では、従来は抗Jo-1抗体のみで、その陽性率は1割程度でした。
近年、様々な筋炎特異的自己抗体(Myositis Specific Autoantibodies:MSAs)が同定され、そのうち抗ARS抗体(抗Jo-1抗体を含む)、抗MDA5抗体、抗TIF1-γ抗体、抗Mi-2抗体の4つが一般診療で測定可能となりました。これら4つのMSAsのDM患者における陽性率は7割以上で、診断での有用性が確認されています。さらに、MSAsはPM/DMの診断のみならず、病型分類や治療法の選択、治療効果の判定にも有用であることも明らかにされています。
これらのMSAs検査を診断・病型分類に用いるポイントについて解説します。


陽性になる「MSAs」の種類と症状・合併症にはそれぞれ関連性がみられます。

MSAsの種類と症状・合併症の関連性


◎ 上記の特徴に一致しない非典型例が少数ながら存在しますので、診断に際しては注意が必要です。
◎ 成人と小児でMSAsの陽性率は異なりますが、臨床的な特徴は悪性腫瘍の併発頻度以外はよく似ています。
◎ 抗TIF1-γ抗体陽性の小児、若年例では悪性腫瘍の合併頻度は低いことが知られています。
◎ 抗ARS抗体陽性の間質性肺炎は慢性・亜急性型が主で治療反応性は比較的良好ですが、抗MDA5抗体陽性の間質性肺炎は急速進行性の経過を取ることが多く生命予後不良です。
◎ 抗ARS抗体陽性例では、間質性肺炎が皮疹や筋炎に先行する場合があり、特発性間質性肺炎と診断された患者の一部で、抗ARS抗体が陽性となることが明らかとなっています。

「MSAs」を用いた診断フロー
皮疹

(A)DM皮疹がなく筋炎症状のみであれば、抗ARS抗体検査を実施します。
(B)DM皮疹がある場合、間質性肺炎の疑いの有無で判断します。間質性肺炎の疑いがある場合、
抗ARS抗体、抗MDA5抗体検査を実施します。
(C)いずれも陰性の場合、抗TIF1-γ抗体、抗Mi-2抗体検査を実施します。
(D)間質性肺炎の疑いがない場合、抗TIF1-γ抗体、抗Mi-2抗体検査を実施します。
(E)いずれも陰性の場合、抗ARS抗体、抗MDA5抗体検査を実施します。

補足情報
● 抗ARS抗体陰性でも、抗原に含まれていない抗OJ抗体陽性の可能性が残ります。
● Mi-2タンパクとTIF1-γタンパクは相同性の高い領域があり交差反応が起こりえるため、同時に測定することが望ましいです。
● MSAsの併存は稀です。
● 抗MDA5抗体は治療が奏効した場合に抗体価が低下することから、治療効果判定に有用である可能性が示されています。
● 小児のDMの場合は抗MDA5抗体検査、抗Mi-2抗体、抗TIF1-γ抗体検査を優先して実施します。

留意事項
● 2017年10月現在、抗ARS抗体、抗MDA5抗体、抗Mi-2抗体、抗TIF1-γ抗体検査、いずれも保険適用となっています。出検に際しましては、各項目の留意事項をご確認ください。
● いずれの場合も多発性筋炎・皮膚筋炎の難病認定基準を参考に診断して下さい。抗体検査では偽陰性、偽陽性があり得るため、その結果のみで臨床判断(診断、治療など)をしないでください。

作成:2017年11月 web公開:2020年3月