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自己免疫疾患検査

抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎 どのように診断するか

監修:現 大阪大学大学院医学系研究科 情報統合医学皮膚科学教室
(旧 筑波大学医学医療系皮膚科)
教授 藤本 学 先生

筋炎特異的自己抗体は、筋炎の病型、病態、臨床経過、治療反応性と密接に関連していることが知られています。抗MDA5抗体陽性患者は、筋炎特異的自己抗体の1つですが、無筋症性皮膚筋炎(CADM:Clinical Amyopathic DM)患者に多く認められ、急速に進行する、治療抵抗性・予後不良の急速進行性間質性肺炎を高頻度に併発することが知られています。
診断・治療の遅れは、患者の予後に大きく影響しますので、早い段階から本抗体陽性を疑い、診断することが重要です。
抗MDA5抗体陽性の患者の多くは、皮膚症状を主症状として皮膚科を受診すると考えられます。特徴的な皮膚症状を有している場合、本抗体を疑うことはそれほど難しくありませんが、特徴的な皮膚症状以外の皮疹の場合でも、本抗体を疑い検査を実施すべき場合があります。
今回、抗MDA5抗体検査が保険適用となり、臨床の場で使用可能となりましたので本抗体検査を中心に、診断のコツについて解説します。
抗MDA5抗体陽性患者にみられる様々な皮疹

抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎を疑うには、皮疹が最も重要な手がかりになります。ヘリオトロープ疹や、ゴットロン丘疹/徴候といった皮膚筋炎に特徴的な皮疹以外にも、皮膚筋炎を疑う皮疹は多彩です。その中で、逆ゴットロン徴候(手指屈側や手掌の鉄棒まめ様皮疹)や血管障害を思わせる皮疹(滲出性紅斑、紫斑、皮膚潰瘍)が抗MDA5抗体陽性例に特徴的な皮疹です。本抗体陽性例では臀部も皮疹の好発部位の一つです。
皮膚筋炎の皮膚症状の観察に際して重要なことは、その発生部位とその性状です。部位が重要なのは、皮膚筋炎の皮疹が、物理的な刺激によるケブネル現象より生じるためです。皮膚筋炎が疑われる皮疹を見つけた場合、物理的刺激を受けやすい他の好発部位にも皮疹が認められないかを系統的に観察することは大変重要です。

皮疹


皮膚筋炎に特異的な自己抗体別に見た臨床的特徴

自己抗体別に見た臨床的特徴


皮膚症状以外に考慮すべき臨床症状
◎ 40~60歳代の女性に多い
◎ 関節痛・関節炎
◎ 筋炎の症状は無い、或いは軽い
◎ 軽微な筋炎関連検査値の異常を認める場合がある
◎ 乾性咳嗽、労作時の息切れ
◎ 赤沈亢進、CRP高値
◎ 発熱
◎ 胸部HRCT画像により下肺野の浸潤影 もしくは、すりガラス陰影が認められる

抗MDA5抗体陽性の患者の多くは診断時に皮膚筋炎を疑わせる何らかの皮疹が認められます。しかし、ごくまれに皮膚症状に先行して急速進行性間質性肺炎を発症する症例もあるため、急速に増悪する間質性肺炎では、本抗体陽性を疑い、速やかに抗体の有無を測定することが重要です。
呼吸器症状が認められなくても、胸部HRCTにより下肺野の浸潤影もしくはすりガラス様の陰影が認められ、皮膚筋炎に特徴的な皮疹が認められる場合は、抗MDA5抗体陽性を疑い、速やかに抗MDA5抗体の検査の実施を検討します。


診断に必要な検査
血液検査

・抗ARS抗体(抗Jo-1抗体を含む)
・抗TIF1-γ抗体
・抗Mi-2抗体
・抗核抗体
・クレアチンキナーゼ(CK)
・乳酸脱水素酵素(LDH)
・フェリチン
・アルドラーゼ
・抗MDA5抗体
・GOT(AST)
・GPT(ALT)
・ミオグロビン
・KL-6
・SP-D
・CRP



皮膚病理検査

皮膚病理所見

● 表皮基底膜の液状変性及び真皮ムチン沈着
● 真皮血管周囲性の炎症性細胞浸潤


予後予測に有用な検査

・PaO2/FiO2比やA-aDO2
・KL-6、SP-D
・抗MDA5抗体価
・フェリチン値

経過や予後予測のマーカーとしてはPaO2/FiO2比やA-aDO2の、KL-6やSP-Dの推移、抗MDA5抗体の存在やその抗体価の推移、フェリチン値やその推移などが有用です。
抗MDA5抗体価推移と予後

経時的に血清を採取しえた16例について抗MDA5抗体価の推移を比較したところ、死亡群(4例)では経過観察期間が短いものの抗体価は低下しない傾向にありました。一方、生存群(12例)では、治療前の抗体価と比較して一部の症例で治療導入4週後から速やかに低下を認め、治療介入8週後以降で有意に低下を示しました。
・開始前:99.9±16.2
・4週後:99.2±19.2
・8週後:87.8±43.6
     (p=0.018)
  三森ら、科学研究費助成事業研究成果報告書 平成25年度報告書より


症例紹介
主訴
56 歳 女性 顔面と手の指腹および爪囲に紅斑が出現し、その後、膝と手の関節痛が出現。初診時に筋力低下はなかったが両下肺に乾性ラ音を聴取し、1週後労作時呼吸困難が出現したため、入院した。

診断時所見
CKは522IU/Lと上昇し、CRPと血沈は軽度上昇。フェリチンは342.6 ng/mLと上昇し、KL-6も高値。抗核抗体と抗ARS抗体は陰性、抗MDA5抗体はIndex218で陽性。動脈血ガス分析ではA-aDO2が開大していた。

治療経過
抗MDA5抗体陽性であることから、急速進行性間質性肺炎により予後不良となる可能性が高いと判断し、プレドニゾロン50 mg/day、タクロリムス3 mg/day 内服を開始するとともに、シクロホスファミド間歇静注療法を3週間隔で2回併用。これらの治療により皮膚筋炎、間質性肺炎ともに軽快し、その後タクロリムス3 mg/dayを併用しながらプレドニゾロンを7 mg/dayに漸減し、治療継続した。

治療のポイント
抗MDA5抗体陽性のCADMを伴う間質性肺炎 (IP) の場合、難治性のIPが予想されます。特に、数週間から数か月以内で、呼吸器症状や画像所見、PaO2/FiO2比やA-aDO2の値、KL-6、SP-D、抗MDA5抗体価、フェリチン値などの検査値について増悪が認められる場合は、初期からステロイド大量療法とともに強力な免疫抑制療法を併用することが重要です。副腎皮質ステロイド大量療法(プレドニゾロン1 mg/体重kg/dayの内服、もしくはメチルプレドニゾロンパルス療法の後、プレドニゾロン1 mg/体重kg/dayの内服)を速やかに開始し、同時にカルシニューリン阻害薬を併用します。タクロリムスの場合は5-10 ng/mL程度に保つようにし、腎機能障害に留意しながら使用します。さらに、シクロホスファミド間歇静注療法の併用も検討します。免疫グロブリン大量静注療法の有効例の報告もあります。
※ 免疫グロブリン大量静注療法は保険適用外です。

作成:2016年11月 web公開:2020年3月