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臨床検査薬

自己免疫疾患検査

抗MDA5抗体価測定が病勢把握に有効であった皮膚筋炎合併間質性肺疾患症例

現 熊本大学大学院生命科学研究部 呼吸器内科学分野
(旧 新潟大学医歯学総合病院 呼吸器感染症内科)
教授 坂上 拓郎 先生

患者

29歳 女性



主訴

皮疹 関節痛



現病歴

両手指と前胸部に掻痒感を伴う皮疹が出現し改善が認められないため、近医皮膚科を受診した。急性湿疹を疑われ、抗アレルギー薬を処方されたが、皮疹の範囲は拡大傾向であった。約3ヶ月後より両側肩・肘・膝関節痛が出現したため、総合病院皮膚科を受診し、皮膚所見と関節症状から皮膚筋炎を疑われ、胸部CT検査で両側下葉に網状影を指摘され、間質性肺炎の合併が認められたため当院を紹介され、精査加療目的で入院した。

初診時現症

胸部聴診上、両背側下部にcracklesを認めた。胸部にV徴候あり。両手指PIP関節にGottron徴候あり。爪周囲毛細血管の血管炎症様変化あり。四肢伸側に紅斑あり。徒手筋力検査では、筋力の低下は認められなかったが、血液検査では軽度の筋原性酵素の上昇が認められた。また、CRP、ESRの炎症性マーカーが軽度上昇を認め、抗MDA5抗体がIndex値173.4と陽性を示した。

入院時検査所見

入院時検査所見
経過

経過
皮膚筋炎に特徴的な皮疹、関節痛、赤沈亢進、軽度の筋原性酵素の上昇から、CADMおよびこれに伴う間質性肺疾患(CADM-ILD)と診断した。入院時よりステロイドパルス療法を開始した。同時にシクロスポリンA(CyA)注)の内服も開始し、内服2時間後の目標血中濃度(ピーク値)を800 ng/mL以上として増減した。CADMにはRP-ILDの合併がしばしば認められ予後不良であることから、倫理委員会の承認と本人の同意を得た後に、治療開始1週間後よりミコフェノール酸モフェチル(MMF)注) 1,500 mg/dayの内服を開始した。有害事象は認めず、治療開始3ヶ月後の胸部CTでは両肺野陰影は改善を認めた。その後、約1年半の経過でCyA、PSLを漸減、MMFを漸減中止したが再燃は認めていない。また入院時の血清抗CADM-140/MDA5抗体価はIndex値173.4と上昇していたが、治療経過に伴い減少し約1年で正常化(Index値13.3)した。
注)シクロスポリンA(CyA)及び、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)は保険適用外

本症例における初期の抗CADM-140/MDA5抗体価はIndex値で173.4と高値であったが、その後の治療により抗体価の低下が続き陰性化した。臨床状況も寛解が維持されたことからも、抗MDA5抗体価は治療効果判定や病勢のマーカーとして有用であることが示唆された。

作成:2016年6月 web公開:2020年3月