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自己免疫疾患検査

膠原病に合併する間質性肺炎 どのように診断するか

監修:浜松医科大学内科学第二講座
助教 穂積 宏尚 先生
教授 須田 隆文 先生

膠原病に合併する間質性肺炎は、肺病変が全身症状に先行する症例や、全身症状が乏しく肺病変だけが目立つ症例などが存在し、特発性間質性肺炎(IIP)との鑑別が難しい場合があります。診断のポイントは、膠原病の多彩な全身症状を見逃さず、膠原病を疑うことにあります。
膠原病には関節リウマチや強皮症、多発性筋炎/皮膚筋炎 (PM/DM)、シェーグレン症候群などの疾患が知られています。しかし、同じ疾患であってもいくつかの病型が存在し、症例によって肺病変の種類や治療反応性、予後が異なるため、診断と治療法の選択には注意が必要です。例えば全身性強皮症では、限局型皮膚硬化型の全身性強皮症(lcSSc)と、びまん皮膚硬化型の全身性強皮症(dcSSc)が存在することが知られており、一般的に間質性肺炎はdcSScに多く、肺高血圧症はlcSScに多いと言われております。膠原病に特異的に認められる疾患標識抗体は、疾患の病型や病態、予後と関連していることが知られており、診断に際してこれらの自己抗体を測定することは非常に有効です。
最近、PM/DMに特異的な自己抗体である抗ARS抗体や、抗MDA5抗体が保険適用となり臨床で使用することが可能となりました。従来IIPと診断されていた患者の一部には抗ARS抗体陽性例が存在し、後にPM/DMを発症する肺病変先行型PM/DMの存在が報告されています。また、抗MDA5抗体は予後不良な急速進行性間質性肺炎の発症と関連することが知られております。
今回、膠原病に合併する間質性肺炎の診断のポイントと、新たに承認されたPM/DMの特異的自己抗体について解説します。
間質性肺炎の診断フローチャート
診断フローチャート

膠原病の診断

疾患特異性の高い自己抗体検査は、膠原病性間質性肺炎の診断に有力な検査です。

指さし

関節や皮膚など、全身を詳細に診察します。各膠原病に特徴的な所見が認められる場合、血液検査にて自己抗体の有無をチェックします。


指さし

膠原病に合併した間質性肺炎では、画像や組織学的検査だけではIIPとの鑑別が困難であるため、自己抗体検査や一般的血液検査も実施します。


指さし

膠原病で認められる自己抗体の多くは、疾患特異性が高く、診断に有用であるばかりでなく、病型や予後、治療反応性など多くの情報を提供してくれます。
それぞれの自己抗体の特徴を理解し、診療に応用することが重要です。


指さし

上記の膠原病の他、ANCA関連疾患においても肺病変を伴う場合があります。抗好中球細胞質抗体(ANCA)測定や尿検査も重要です。


指さし

抗MDA5抗体陽性CADM/DMの間質性肺炎は、急速進行性で予後不良となる場合が多いため、特徴的な皮疹を見逃さないことが重要です。

膠原病の確立した診断基準は満たさないが、膠原病と関連した症状や検査所見(自己抗体)を示すIP患者群が存在します。

指さし

現時点では、このような患者群は特発性として扱われるが、確立した膠原病やIIPsと区別して扱うべきであるという考え方も提唱され、近年UCTDやLD-CTD、AIF-ILD、IPAFといった概念が登場しています。
その臨床的意義については、今後明らかにしていく必要があります。


特発性間質性肺炎における抗ARS抗体の頻度

※膠原病に合併した間質性肺炎の診断や病型分類は未だに確立していないため、特発性間質性肺炎の診断手順や分類を参考にします。


多発性筋炎・皮膚筋炎(PM/DM)に特異的な自己抗体

2015年3学会(日本リウマチ学会、日本皮膚科学会、日本神経学会)より出された「多発(性)筋炎および皮膚筋炎治療ガイドライン」において、筋炎特異的自己抗体は筋炎の病型、病態、臨床経過、治療反応性と密接に関連して有用であるとして、種々の特異的自己抗体を測定することが求められています。(推奨度A)
現在、保険にて使用できる筋炎特異的自己抗体については、抗ARS抗体の他、あらたに抗MDA5抗体、抗TIF1-γ抗体、抗Mi-2抗体が追加されました。それぞれの臨床的特徴と治療反応性・予後は下記の表のとおりです。

筋炎特異性自己抗体 臨床的特徴 治療反応性・予後
抗ARS抗体 PM/DMいずれの病型にも認められる。IPを高頻度に合併し、慢性に経過することが多い。多発関節炎、レイノー現象、発熱、機械工の手といった臨床所見をしばしば伴う。一部の症例では肺病変が先行し、IIPと診断されている例も少なくない。 治療反応性は良好であるが、再燃が多いと言われている。
抗MDA5抗体 DMや無筋症性皮膚筋炎(CADM)に認められる。IPを高頻度に合併し、しばしば急速進行性である。血管障害を示唆する紫斑や穿掘性潰瘍、逆ゴットロン徴候も特徴的である。 急速進行性IPを合併した場合には予後不良例が多く、大量ステロイド療法とともに早期から免疫抑制剤の併用を検討する。治療経過や予後予測のマーカーとして、抗MDA5抗体価や血清フェリチンの有用性が報告されている。
抗TIF1-γ抗体 皮膚症状は広範囲で激しい皮疹を呈する場合が多い、筋症状は比較的弱いが嚥下障害に注意、間質性肺炎は低頻度、悪性腫瘍を高頻度に合併、小児DMにて最も高頻度に認められるが悪性腫瘍の合併は無い。 悪性腫瘍で予後不良、悪性腫瘍を合併している場合悪性腫瘍の治療を優先しDMの症状が改善しない場合筋炎の治療を追加する。
抗Mi-2抗体 筋症状と特徴的な皮疹(特にVネックサインやショールサインなど)を伴う典型的なDMに認められる。間質性肺炎や悪性腫瘍の合併が少ないと言われている。 治療反応性は良好であるが、再燃が多いと言われている。

抗ARS抗体と抗MDA5抗体
抗ARS抗体陽性例と抗MDA5抗体陽性例のいずれも間質性肺炎を高頻度に合併します。抗ARS抗体陽性例の半数以上が慢性発症ですが、抗MDA5抗体陽性例は急速進行性が多く、しばしば予後不良です。これらの抗体の特徴を理解することは、間質性肺炎の診断に重要です。

疾患別の抗体陽性率

疾患別の抗体陽性率

抗体陽性別の臨床所見との比較

抗体陽性別の臨床所見との比較


作成:2017年9月 web公開:2020年3月