略語集
ACR: American College of Rheumatology(アメリカリウマチ学会)
CLEIA: chemiluminescent enzyme immunoassay(化学発光酵素免疫測定法)
ENA: Extractable Nuclear Antigen(可溶性核抗原)
EULAR: EUropean League Against Rheumatism(欧州リウマチ学会)
ICAP: international consensus on antinuclear antibody pattern
IIF: indirect immunofluorescence(間接蛍光抗体法)
SLE: Systemic Lupus Erythematosus(全身性エリテマトーデス)
snRNP: small nuclear ribonucleoprotein(核内低分子リボ核タンパク質)
抗Sm抗体: 抗Smith抗体
抗Sm抗体は全身性エリテマトーデス(Systemic Lupus Erythematosus: SLE)の患者の血清中に認められる抗ENA(Extractable Nuclear Antigen)抗体の一つです[1]。その対応抗原はB/B'およびDタンパク質が知られており、核内低分子リボ核タンパク質(snRNP)であるU1, U2, U4, U5, U6-RNPを構成するタンパク質群に含まれます[2-5]。
抗Sm抗体はSLEの重要な疾患標識抗体で、患者の5~30%に検出されます[6]。特にSLEの重症例において検出されること、神経精神ループス(SLEに合併する中枢神経病変)や進行性腎症などと関連することが報告されています[7]。
抗Sm抗体は他の疾患ではほとんど認められないため[6,8]、疾患標識抗体としての有用性は高く、アメリカリウマチ学会(American College of Rheumatology; ACR)/欧州リウマチ学会(EUropean League Against Rheumatism; EULAR)のSLE分類基準(2019年)の免疫学項目に採用されています[9]。陽性時の項目点数も6点と非常に高い点が割り振られており(合計10点以上でSLEと分類)、SLEを診断する上で非常に重要な意味を持ちます。なお、本邦における指定難病SLEの診断基準にも抗Sm抗体は免疫所見として採用されています[10]。
特定の薬剤使用によって抗Sm抗体の発現が誘導されるという報告は見られません。
また、抗Sm抗体の陽陰性によって使用の可否が判断される薬剤も報告はありません。
•化学発光酵素免疫測定法:ステイシア試薬
(chemiluminescent enzyme immunoassay: CLEIA)
検出に化学発光を用いる酵素免疫測定法です。抗原が結合した磁性粒子と検体を反応させると抗原-抗体反応が生じます。この磁性粒子を集磁・洗浄した後、酵素標識抗体を加えると、抗原結合磁性粒子-抗体-酵素標識抗体の複合体が形成されます。続いて集磁・洗浄し未反応物を除去してから、基質液を加えると、基質は複合体中の酵素によって加水分解され発光します。この発光をカウントすることによって検体中の抗原特異的自己抗体濃度を測定します。溶液中に浮遊する抗原結合磁性粒子と検体を混合して反応させることで、短時間で効率的な自己抗体の検出が可能です。
ステイシア MEBLux™テスト Smでは、固相抗原に精製したnative SmD抗原を用います[11]。
•最小検出感度
1.0 U/mL
•基準値
陽性:≧10.0 U/mL
陰性:<10.0 U/mL
ステイシア試薬は以下の構成で設計しています。試薬の設計は各社で異なり、この違いから測定結果の乖離が生じる可能性があります。
•ステイシア試薬の設計
| ステイシア MEBLux™テスト Sm | |
|---|---|
| 測定原理 | CLEIA |
| 抗原由来 | 精製native SmD |
| 検出用抗体 | 抗ヒトイムノグロブリンポリクローナル抗体(ヤギ) |
| 検出対象抗体 | ヒトイムノグロブリン |
| 標識物質 | アルカリホスファターゼ |
| 検出用基質 | 2-クロロ-5-(4-メトキシスピロ{1,2-ジオキセタン-3,2'-(5'-クロロ)-トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン}-4-イル)-1-フェニルホスフェート・二ナトリウム (慣用名:CDP-Star) |
| 検出対象 | 発光 |
•IIF法における抗Sm抗体の染色パターン
HEp-2細胞を基質とした間接蛍光抗体法(indirect immunofluorescence: IIF法)において、抗Sm抗体は核の顆粒状の染色パターンを呈することが報告されています。抗核抗体染色型に関する国際的コンセンサス(international consensus on antinuclear antibody pattern; ICAP)の分類においては、AC-5型(Nuclear large/coarse speckled, 核粗大斑紋型)の関連抗原としてSmが報告されています[12]。
•ステイシア試薬とフルオロ HEPANA-2 テストの乖離要因
2試薬間の乖離は使用抗原の違い、測定原理の違いに由来すると考えられます。ステイシア MEBLux™テスト Smは精製native SmDを抗原として用い、測定原理をCLEIAとして抗Sm抗体を検出します。対して、フルオロ HEPANA-2 テストはHEp-2細胞を抗原として用い、IIF法により抗Sm抗体を含む自己抗体を検出します。IIF法ではHEp-2細胞に存在するあらゆる種類の抗原が検出対象となり、特定の抗原を用いるステイシア試薬より多くの自己抗体を検出するため、2つの試薬間において結果の乖離が生じえます。
•抗Sm抗体単独陽性の可能性
一般的に抗Sm抗体は抗RNP抗体とともに陽性になると言われていますが、抗Sm抗体のみが単独で陽性になる場合が稀にあり得ます。これは、患者血清中の抗Sm抗体エピトープの多様性と抗原間の相同性によると考えられます。
抗Sm抗体の主要な対応抗原は全てのsnRNPに共通するB/B'抗原およびD抗原で、SLE患者血清中には抗SmB/B’抗体と抗SmD抗体が共存するとされます[13]。抗SmB/B’抗体のエピトープの相同配列はU1-RNPを構成するAおよびC抗原内にも存在しており、抗Sm抗体の多くはAおよびC抗原にも結合します[13]。対して、抗SmD抗体のエピトープに抗原間の相同性は無く、最もSLE特異的な抗体とされています[6, 14]。
ステイシア MEBLux™テスト Smでは精製native SmD抗原として用い、ステイシアMEBLux™テスト RNPではリコンビナントの70k, A, C抗原タンパク質と合成核酸U1-RNAの複合体を抗原としています。上述の通り、抗Sm抗体の多くはU1-RNP抗原のAおよびCタンパク質に対しても結合するため、抗Sm抗体陽性血清の多くは当社のRNP試薬も陽性となります。しかし、患者血清中に抗SmD抗体しか存在しない場合、当社Sm試薬で陽性、当社RNP試薬では陰性となり、Sm単独陽性が生じる可能性があります。
| 抗D抗体と 抗B/B’抗体 |
抗D抗体のみ | |||
|---|---|---|---|---|
| ステイシア MEBLux™ テスト Sm |
精製native D抗原 | ○ | ○ | ― |
| ステイシア MEBLux™ テスト RNP |
リコンビナントA抗原 | ○* | ― | ○ |
| リコンビナントC抗原 | ○* | ― | ||
| リコンビナント70k抗原 | ― | ― | ||
| 合成核酸U1-RNA | ― | ― | ― |
*AおよびC抗原は抗SmB/B’抗体のエピトープの相同配列を含む。
最終更新日:2025年9月