略語集
CLEIA: chemiluminescent enzyme immunoassay(化学発光酵素免疫測定法)
dcSSc: diffuse cutaneous SSc(びまん皮膚硬化型全身性強皮症)
ENA: Extractable Nuclear Antigen(可溶性核抗原)
ICAP: international consensus on antinuclear antibody pattern(抗核抗体パターンに関する国際コンセンサス)
IIF: indirect immunofluorescence(間接蛍光抗体法)
SSc: Systemic sclerosis(全身性強皮症)
抗Scl-70抗体は抗トポイソメラーゼⅠ抗体としても知られる抗ENA(Extractable Nuclear Antigen)抗体の一つです。その対応抗原は核内酵素であるScl-70タンパク質(別名: トポイソメラーゼⅠ)が知られています[1, 2]。
抗Scl-70抗体は全身性強皮症(Systemic sclerosis: SSc)で特異的に検出される特徴があり、重要な疾患標識抗体です。SSc患者の約30~40%に検出され[3]、他の膠原病ではほとんど見られません[4, 5]。
抗Scl-70抗体は、本邦における指定難病SScの診断基準において診断のカテゴリーを構成する小基準として採用されています[6]。
また、抗Scl-70抗体はSScの病型分類に重要であり、陽性の場合は、びまん皮膚硬化型全身性強皮症(diffuse cutaneous SSc: dcSSc)へ進展する可能性が高いと言われています。dcSSc患者では、発症6年以内に皮膚硬化が進行し、この時期に一致して肺、消化管、腎、心などの臓器病変や関節屈曲拘縮が進行することが特徴で、進行時期のdcSScの皮膚硬化は積極的な治療対象となります[7]。また、抗Scl-70抗体と関連する内臓病変としては間質性肺炎が最も重要で、腎クリーゼのリスクも高いことが報告されています[8]。
特定の薬剤使用によって抗Scl-70抗体の発現が誘導されるという報告は見られません。
また、抗Scl-70抗体の陽陰性によって使用の可否が判断される薬剤も報告はありません。
•化学発光酵素免疫測定法:ステイシア試薬
(chemiluminescent enzyme immunoassay: CLEIA)
検出に化学発光を用いる酵素免疫測定法です。抗原が結合した磁性粒子と検体を反応させると抗原-抗体反応が生じます。この磁性粒子を集磁・洗浄した後、酵素標識抗体を加えると、抗原結合磁性粒子-抗体-酵素標識抗体の複合体が形成されます。続いて集磁・洗浄し未反応物を除去してから、基質液を加えると、基質は複合体中の酵素によって加水分解され発光します。この発光をカウントすることによって検体中の抗原特異的自己抗体濃度を測定します。溶液中に浮遊する抗原結合磁性粒子と検体を混合して反応させることで、短時間で効率的な自己抗体の検出が可能です。
ステイシア MEBLux™テスト Scl-70では、固相抗原に精製したリコンビナントScl-70抗原を用います。
•最小検出感度
1.0 U/mL
•基準値
陽性:≧10.0 U/mL
陰性:<10.0 U/mL
ステイシア試薬は以下の構成で設計しています。試薬の設計は各社で異なり、この違いから測定結果の乖離が生じる可能性があります。
•ステイシア試薬の設計
| ステイシア MEBLux™テスト Scl-70 | ||
|---|---|---|
| 測定原理 | CLEIA | |
| 抗原由来 | リコンビナントScl-70抗原 | |
| 検出用抗体 | 抗ヒトイムノグロブリンポリクローナル抗体(ヤギ) | |
| 検出対象抗体 | ヒトイムノグロブリン | |
| 標識物質 | アルカリホスファターゼ | |
| 検出用基質 | 2-クロロ-5-(4-メトキシスピロ{1,2-ジオキセタン-3,2'-(5'-クロロ)-トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン}-4-イル)-1-フェニルホスフェート・二ナトリウム (慣用名:CDP-Star) |
|
| 検出対象 | 発光 | |
•IIF法における抗Scl-70抗体の染色パターン
HEp-2細胞を基質とした間接蛍光抗体法(indirect immunofluorescence: IIF法)において、抗Scl-70抗体は特徴的な染色パターンを呈することが報告されています。抗核抗体パターンに関する国際コンセンサス(international consensus on antinuclear antibody pattern; ICAP)の分類ではAC-1 核均質型(Nuclear homogeneous)とされる場合がありますが、典型的には核小体、細胞質との複合型であるAC-29 DNAトポイソメラーゼⅠ(トポⅠ)様型(DNA topoisomerase(topo Ⅰ)-like)の関連抗原としてScl-70が報告されています[9, 10]。AC-29パターンは、SSc、特により強く症状が出現するびまん皮膚硬化型SSc(dcSSc)に対して非常に特異的です[11]。
•ステイシア試薬とフルオロ HEPANA-2 テストの乖離要因
2試薬間の乖離は使用抗原の違い、測定原理の違いに由来すると考えられます。ステイシア MEBLux™テスト Scl-70はリコンビナントScl-70を抗原として用い、測定原理をCLEIAとして抗Scl-70抗体を検出します。対して、フルオロ HEPANA-2 テストはHEp-2細胞を抗原として用い、IIF法により抗Scl-70抗体を含む自己抗体を検出します。IIF法ではHEp-2細胞に存在するあらゆる種類の抗原が検出対象となり、特定の抗原を用いるステイシア試薬より多くの自己抗体を検出するため、CLEIAが陰性かつIIF法陽性という結果は生じえます。一方で、全身性強皮症を対象とした文献において、CLEIAが陽性かつIIF法陰性となる乖離例は現時点で報告されていません(2025年11月時点)。
最終更新日:2026年1月