略語集
CLEIA: chemiluminescent enzyme immunoassay(化学発光酵素免疫測定法)
ENA: Extractable Nuclear Antigen(可溶性核抗原)
IIF: indirect immunofluorescence(間接蛍光抗体法)
lcSSc: limited cutaneous SSc(限局皮膚硬化型SSc)
MCTD: Mixed Connective Tissue Disease(混合性結合組織病)
PAH: Pulmonary Arterial Hypertension(肺動脈性高血圧症)
PM/DM: polymyositis/dermatomyositis(多発性筋炎/皮膚筋炎)
RA: rheumatoid arthritis(関節リウマチ)
SjS: Sjögrenʼs syndrome(シェーグレン症候群)
SLE: Systemic Lupus Erythematosus(全身性エリテマトーデス)
snRNP: small nuclear ribonucleoprotein(核内低分子リボ核タンパク質)
SSc: Systemic Sclerosis(全身性強皮症)
抗RNP抗体は、混合性結合組織病(Mixed Connective Tissue Disease: MCTD)や全身性エリテマトーデス(Systemic Lupus Erythematosus: SLE)の患者の血清中に認められる抗ENA(Extractable Nuclear Antigen)抗体の一つです[1]。その対応抗原として、U1-RNPを構成するRNP-70、RNP-A、RNP-C抗原が知られています[2]。
抗RNP抗体はMCTD患者において高力価陽性となる特徴があり[3、4]、診断必須項目であるため陽性率は100%となります[5]。一方で、広くMCTD以外の自己免疫疾患でも陽性となり[6]、SLEとの鑑別の点で特異度が高くないという特徴もあります[7]。また、抗(U1-)RNP抗体は全身性強皮症(Systemic Sclerosis: SSc)においても検出されるとの報告があります[8]。
•表1 各疾患における抗RNP抗体の陽性率
| 抗RNP抗体陽性率 | ||
|---|---|---|
| 縄田 益之ら[6] | Cappelli Sら[9] | |
| MCTD | 100% | 91~100% |
| SLE | 42% | 20~40% |
| SSc | 5% | 2~14% |
| PM/DM | 4% | 6~9% |
| SjS | 5% | ー |
| RA | 0% | ー |
抗RNP抗体は本邦の指定難病MCTDの診断基準に記載されている重要な疾患標識抗体です[10]。
また、本邦の指定難病SScの診断基準には含まれていませんが、抗RNP抗体は限局皮膚硬化型SSc(limited cutaneous SSc: lcSSc)の約15%で観察され病型分類にも有用との報告があり[8] [11]、肺動脈性高血圧症(Pulmonary Arterial Hypertension: PAH)のリスク因子であるとされています[12]。
特定の薬剤使用によって抗RNP抗体の発現が誘導されるという報告は見られません。
また、抗RNP抗体の陽陰性によって使用の可否が判断される薬剤も報告はありません。
•化学発光酵素免疫測定法:ステイシア試薬
(chemiluminescent enzyme immunoassay: CLEIA)
検出に化学発光を用いる酵素免疫測定法です。抗原が結合した磁性粒子と検体を反応させると抗原-抗体反応が生じます。この磁性粒子を集磁・洗浄した後、酵素標識抗体を加えると、抗原結合磁性粒子-抗体-酵素標識抗体の複合体が形成されます。続いて集磁・洗浄し未反応物を除去してから、基質液を加えると、基質は複合体中の酵素によって加水分解され発光します。この発光をカウントすることによって検体中の抗原特異的自己抗体濃度を測定します。溶液中に浮遊する抗原結合磁性粒子と検体を混合して反応させることで、短時間で効率的な自己抗体の検出が可能です。
ステイシア MEBLux™テスト RNPでは、固相抗原にリコンビナントのRNP-70、RNP-A、RNP-C抗原タンパク質とRNA骨格(U1-RNA)の複合体を用います[13]。

*リコンビナントのRNP-70、RNP-A、RNP-C抗原タンパク質とU1-RNAの複合体
•最小検出感度
2.0 U/mL
•基準値
陽性:≧10.0 U/mL
陰性:<10.0 U/mL
ステイシア試薬は以下の構成で設計しています。試薬の設計は各社で異なり、ステイシア MEBLux™テスト RNPではRNA骨格(U1-RNA)を含めた複合体を用いているため立体構造認識の抗RNP抗体を検出できますが、RNA骨格を含まない試薬では立体構造を認識する抗体を検出することができず、乖離が生じる可能性があります。
•ステイシア試薬の設計
| ステイシア MEBLux™テスト RNP | ||
|---|---|---|
| 測定原理 | CLEIA | |
| 抗原由来 | リコンビナントのRNP-70、RNP-A、RNP-C抗原タンパク質とU1-RNAの複合体 | |
| 検出用抗体 | 抗ヒトイムノグロブリンポリクローナル抗体(ヤギ) | |
| 検出対象抗体 | ヒトイムノグロブリン | |
| 標識物質 | アルカリホスファターゼ | |
| 検出用基質 | 2-クロロ-5-(4-メトキシスピロ{1,2-ジオキセタン-3,2'-(5'-クロロ)-トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン}-4-イル)-1-フェニルホスフェート・二ナトリウム (慣用名:CDP-Star) |
|
| 検出対象 | 発光 | |
•IIF法における抗RNP抗体の染色パターン
HEp-2細胞を基質とした間接蛍光抗体法(indirect immunofluorescence: IIF法)において、抗RNP抗体は核の顆粒状の染色パターンを呈することが報告されています。抗核抗体染色型に関する国際的コンセンサス(international consensus on antinuclear antibody pattern; ICAP)の分類においては、AC-5型(Nuclear large/coarse speckled, 核粗大斑紋型)の関連抗原としてRNPが報告されています[14]。
•ステイシア試薬とフルオロ HEPANA-2 テストの乖離要因
2試薬間の乖離は使用抗原の違い、測定原理の違いに由来すると考えられます。ステイシア MEBLux™テスト RNPはリコンビナントのRNP-70、RNP-A、RNP-C抗原タンパク質とU1-RNAの複合体を抗原として用い、測定原理をCLEIAとして抗RNP抗体を検出します。対して、フルオロ HEPANA-2 テストはHEp-2細胞を抗原として用い、IIF法により抗RNP抗体を含む自己抗体を検出します。IIF法ではHEp-2細胞に存在するあらゆる種類の抗原が検出対象となり、特定の抗原を用いるステイシア試薬より多くの自己抗体を検出するため、2つの試薬間において結果の乖離が生じえます。
最終更新日:2025年10月