略語集
GBM: glomerular basement membrane(糸球体基底膜)
NC1: non-collagenous 1
RPGN: rapidly progressive glomerulonephritis(急速進行性糸球体腎炎)
ANCA: anti-neutrophil cytoplasmic antibody(抗好中球細胞質抗体)
CHCC: Chapel Hill Consensus Conference
CLEIA: chemiluminescent enzyme immunoassay(化学発光酵素免疫測定法)
IIF: indirect immunofluorescence(間接蛍光抗体法)
ELISA: enzyme-linked immunosorbent assay(酵素免疫測定法)
抗GBM抗体は糸球体基底膜(glomerular basement membrane: GBM)や肺胞基底膜に反応する自己抗体であり、1967年にLernerらによりヒト腎炎への関与や抗GBM抗体に病原性があることが報告されました [1]。抗GBM抗体の対応抗原は、基底膜を構成するIV型コラーゲンα3鎖のNC1(non-collagenous 1)ドメイン部分に存在し、なかでもN末端側17-31位のアミノ酸残基(エピトープA)とC末端側127-141位のアミノ酸残基(エピトープB)が抗原エピトープとして同定されています [2]。またα5鎖NC1ドメインのエピトープAも抗原エピトープとして報告されています [3] 。
抗GBM抗体は抗GBM病の疾患標識抗体であり、診断の主要項目として用いられています [4]。抗GBM病は抗GBM抗体により引き起こされる肺や腎糸球体の血管炎であり、腎臓限局型の抗GBM腎炎、肺限局型の抗GBM抗体型肺胞出血、腎臓と肺の双方を障害する型の3つに定義されています [5]。このうち腎臓と肺の双方を障害する型は、以前はグッドパスチャー症候群と呼ばれていましたが、血管炎の国際分類基準CHCC(Chapel Hill Consensus Conference)2012でanti-GBM diseaseに改名され、本邦では抗糸球体基底膜抗体病(抗GBM病)と命名されています [5, 6] 。また本邦では、抗GBM抗体による腎炎は「抗糸球体基底膜腎炎」の病名で指定難病に定められています [7]。
腎炎の中でも短期間で急速に腎不全が進行する腎炎症候群は急速進行性糸球体腎炎(rapidly progressive glomerulonephritis: RPGN)と呼ばれ、主な原因疾患には抗好中球細胞質抗体(anti-neutrophil cytoplasmic antibody: ANCA)関連血管炎や抗GBM病などがあり、RPGNの5%程度が抗GBM病が原因疾患であると報告されています [8] 。本邦では、RPGNは 「腎炎を示す尿所見を伴い数週から数カ月の経過で急速に腎不全が進行する症候群」と定義され、指定難病のひとつに定められています [4, 9]。
抗GBM抗体は指定難病「抗糸球体基底膜腎炎」の診断基準に記載されている重要な疾患標識抗体です [7] 。またRPGNの診断基準に抗GBM抗体は含まれていませんが、RPGN診療ガイドラインには、抗GBM抗体はRPGNの原因疾患同定に必要な疾患特異的自己抗体のひとつとして記載されており、特に抗GBM抗体型腎炎の腎予後はRPGNのなかで最も悪く、肺出血を伴えば生命予後も不良とされています [4]。そのため、RPGNを疑った場合にはANCA関連腎炎と抗GBM抗体腎炎の病型鑑別のため、抗GBM抗体はANCAと共に早期に測定することが望ましい検査とされています [10, 11]。
また抗GBM抗体には病原性があるため、抗GBM抗体値は病勢や治療効果の指標、抗GBM病の再燃の指標として有用と考えられています。また、高力価の抗GBM抗体値は、腎および生命予後不良因子であるとされています [4]。
薬剤の使用によって抗GBM抗体の発現が誘導されるという報告はなく、また抗GBM抗体の陽陰性によって使用の可否が判断される薬剤も報告はありません。
•化学発光酵素免疫測定法:ステイシア試薬
(chemiluminescent enzyme immunoassay: CLEIA)
検出に化学発光を用いる酵素免疫測定法です。抗原が結合した磁性粒子と検体を反応させると抗原-抗体反応が生じます。この磁性粒子を集磁・洗浄した後、酵素標識抗体を加えると、抗原結合磁性粒子-抗体-酵素標識抗体の複合体が形成されます。続いて集磁・洗浄し未反応物を除去してから、基質液を加えると、基質は複合体中の酵素によって加水分解され発光します。この発光をカウントすることによって検体中の抗原特異的自己抗体濃度を測定します。溶液中に浮遊する抗原結合磁性粒子と検体を混合して反応させることで、短時間で効率的な自己抗体の検出が可能です。
ステイシア MEBLux™テスト GBMでは、固相抗原にGBM抗原を用います。
•測定範囲
2.0~350.0 U/mL
•基準値
陽性:≧3.0 U/mL
陰性:<3.0 U/mL
ステイシア試薬は以下の構成で設計しています。試薬の設計は各社で異なり、この違いから測定結果の乖離が生じる可能性があります。
•ステイシア試薬の設計
| ステイシア MEBLux™テスト GBM | ||
|---|---|---|
| 測定原理 | CLEIA | |
| 抗原由来 | Ⅳ型コラーゲン α3NC1ドメイン | |
| 検出用抗体 | 抗ヒトIgGポリクローナル抗体(ヤギ) | |
| 検出対象抗体 | ヒトIgG | |
| 標識物質 | アルカリホスファターゼ | |
| 検出用基質 | 2-クロロ-5-(4-メトキシスピロ{1,2-ジオキセタン-3,2'-(5'-クロロ)-トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン}-4-イル)-1-フェニルホスフェート・二ナトリウム (慣用名:CDP-Star) |
|
| 検出対象 | 発光 | |
血清中の抗GBM抗体の確認には、CLEIAやELISA(enzyme-linked immunosorbent assay)などの固相化GBM抗原を用いた測定法の他に、腎組織を用いた間接蛍光抗体法(indirect immunofluorescence: IIF)もあります。IIF法では、正常腎組織に患者血清を反応させ、蛍光標識抗IgG抗体により基底膜への線状沈着の有無を確認します。IIF法は特異度が高い測定法と考えられていますが、IIF法とELISAを比較した解析では、IIF法では抗GBM抗体を検出できない場合があることも報告されています [12]。また一部の抗GBM病患者では、α3NC1を認識する抗体に加えて、α3NC1以外の抗原を認識する抗体も同時に存在します [3]。IIF法は腎組織を基質とするため、特定の抗原を用いるステイシア試薬より多くの抗原を含みます。そのため、α3NC1以外の抗原を認識する抗GBM抗体のみが存在する検体の場合には、IIF法のみ陽性となる可能性はありますが、現在までにα3NC1以外の抗原に対する抗体のみを有する抗GBM病患者に関する報告はありません。このような使用抗原や測定原理の違いにより、ステイシア試薬とIIF法では結果の乖離が生じえます。
最終更新日:2025年12月