略語集
AQP4: aquaporin-4(アクアポリン4)
CBA: cell-based assay
CLEIA: chemiluminescent enzyme immunoassay(化学発光酵素免疫測定法)
ELISA: enzyme-linked immunosorbent assay
IIF: indirect immunofluorescence(間接蛍光抗体法)
MOG: myelin oligodendrocyte glycoprotein (ミエリンオリゴデンドロサイト糖蛋白)
MOGAD: MOG antibody-associated disease(MOG抗体関連疾患)
MS: multiple sclerosis(多発性硬化症)
NMOSD: neuromyelitis optica spectrum disorders(視神経脊髄炎スペクトラム障害)
抗AQP4抗体は、視神経脊髄炎スペクトラム障害(neuromyelitis optica spectrum disorders: NMOSD)患者の血中からNMO IgGとして発見されました [1]。その後の解析により、NMO IgGが結合する抗原は中枢神経系のアストロサイトに発現する水チャネル分子であるアクアポリン4(aquaporin-4: AQP4)であることが明らかになりました [2]。
抗AQP4抗体はNMOSDのバイオマーカーであり、2021年に厚生労働省が策定したNMOSD診断基準の検査項目に含まれます。この診断基準では、視神経炎および脊髄炎に加え、延髄の最後野、脳幹、視床下部・間脳、大脳に病変があり、抗AQP4抗体が陽性であればNMOSDと確定診断できます。典型的なNMOSD患者の約80%が抗AQP4抗体陽性になります。抗AQP4抗体が陰性でも一定の条件を満たせばNMOSDと診断できますが、病態の異なる多様な疾患が含まれる可能性があります [3]。
抗AQP4抗体はNMOSDと類似疾患の鑑別にも重要です。成人と小児の多発性硬化症(multiple sclerosis: MS)診断において、NMOSDとの鑑別のために抗AQP4抗体を測定して陰性を確認する必要があります。MSの診断には様々な炎症性疾患の鑑別が必要であり、従来MSの亜型とされていたNMOSDとの鑑別は特に重要です [3]。
本邦において抗AQP4抗体はELISA(enzyme-linked immunosorbent assay)とCBA(cell-based assay)で測定可能でした。ELISAは保険適用がありますが、国際診断基準および厚生労働省診断基準で推奨されるCBAは保険適用がありません。抗AQP4抗体の測定において、ELISAはCBAと比較して感度・特異度が低く、偽陰性や偽陽性に注意が必要です [3]。このたび、当社はCBAと良好な判定一致率を示すステイシア MEBLux™テスト AQP4を開発し、2026年に保険収載されました。本試薬は化学発光酵素免疫測定法(chemiluminescent enzyme immunoassay: CLEIA)を測定原理としており、全自動臨床検査システム「STACIA®」の使用により迅速な検査結果の返却が可能です [4]。
抗AQP4抗体の発現を誘導する薬剤は報告されていません。
NMOSDは視神経炎と脊髄炎を中核とする中枢神経系の自己免疫疾患です。抗AQP4抗体の発見により、抗体陽性例における臨床像の多様性が明らかになりました。視神経炎は中心暗点、盲点中心暗点を来たすことが多いですが、他のパターンを呈することもあり、また、急性期には失明に至ることがあります。脊髄炎では、重症の運動麻痺、感覚障害、膀胱直腸障害を呈することが多いです。また、AQP4が高発現する他の中枢神経領域にも病変が好発し、それぞれに特徴的な病変を示します。本邦におけるNMOSDの有病率は5.4人/10万人、発症年齢中央値は44歳、86.7%が女性であったと報告されています [3]。
抗AQP4抗体がNMOSDの直接的な病原性を有することが明らかになっています。抗AQP4抗体は補体依存性、あるいは好酸球や好中球などを介してアストロサイト障害を引き起こします [3]。
•化学発光酵素免疫測定法:ステイシア試薬
(chemiluminescent enzyme immunoassay: CLEIA)
検出に化学発光を用いる酵素免疫測定法です。抗原が結合した磁性粒子と検体を反応させると抗原-抗体反応が生じます。この磁性粒子を集磁・洗浄した後、酵素標識抗体を加えると、抗原結合磁性粒子-抗体-酵素標識抗体の複合体が形成されます。続いて集磁・洗浄し未反応物を除去してから、基質液を加えると、基質は複合体中の酵素によって加水分解され発光します。この発光をカウントすることによって検体中の抗原特異的自己抗体濃度を測定します。溶液中に浮遊する抗原結合磁性粒子と検体を混合して反応させることで、短時間で効率的な自己抗体の検出が可能です。
ステイシア MEBLux™テスト AQP4ではAQP抗原を磁性粒子に結合しています。

•測定範囲
| 項目名 | 測定範囲 |
|---|---|
| AQP4 | 4.7~500.0 U/mL |
•基準値
| 参考基準値 | |
|---|---|
| 陽性 | ≧10.0 U/mL |
| 陰性 | <10.0 U/mL |
全長組換えヒトAQP4 M23アイソフォームタンパク質を抗原に用いています [4]。AQP4は主にM1とM23の2つのアイソフォームが産生されますが、NMOSD患者が有する抗AQP4抗体の主要抗原はM23アイソフォームと考えられています [5]。
ステイシア試薬は以下の構成で設計しています。試薬の設計は各社で異なり、この違いから測定結果の乖離が生じる可能性があります。
•ステイシア試薬の設計
| ステイシア MEBLux™テスト AQP4 | |
|---|---|
| 測定原理 | CLEIA |
| 抗原由来 | 全長組換えヒトAQP4 M23アイソフォームタンパク質 |
| 検出用抗体 | 抗ヒトIgGポリクローナル抗体(ヤギ) |
| 検出対象抗体 | ヒトIgG |
| 標識物質 | アルカリホスファターゼ |
| 検出用基質 | 2-クロロ-5-(4-メトキシスピロ{1,2-ジオキセタン-3,2'-(5'-クロロ)-トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン}-4-イル)-1-フェニルホスフェート・二ナトリウム (慣用名:CDP-Star) |
| 検出対象 | 発光 |
ステイシア MEBLux™テスト AQP4を用いて、CBAで判定された抗AQP4抗体陽性NMOSD 33例、ならびに抗MOG抗体関連疾患(MOG antibody-associated disease: MOGAD) 30例、MS 30例、健常者120例の検体を測定しました。本試薬の抗AQP4抗体陽性NMOSDに対する感度は97.0%、特異度は100.0%でした [4]。

CBAでの抗AQP4抗体の陽性81例、陰性100例の検体を用い、ステイシア MEBLux™テスト AQP4とCBAおよびELISAとの相関を解析しました。CBAとは陽性一致率97.5%、陰性一致率98.0%、全体一致率97.8%でした。ELISAとは陽性一致率98.6%、陰性一致率92.5%、全体一致率95.0%でした [自社相関性試験データ]。
| CBA | 計 | |||
| 陽性 | 陰性 | |||
| 本品 | 陽性 | 79 | 2 | 81 |
| 陰性 | 2 | 98 | 100 | |
| 計 | 81 | 100 | 181 | |
陽性一致率 97.5%
陰性一致率 98.0%
全体一致率 97.8%
| ELISA | 計 | |||
| 陽性 | 陰性 | |||
| 本品 | 陽性 | 73 | 8 | 81 |
| 陰性 | 1 | 99 | 100 | |
| 計 | 74 | 107 | 181 | |
陽性一致率 98.6%
陰性一致率 92.5%
全体一致率 95.0%
最終更新日:2026年8月