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FAQ

MEBGEN™ HPVキット

略語集

HPV: Human Papillomavirus
CIN: Cervical intraepithelial neoplasia

1.ヒトパピローマウイルス(HPV)について

HPVとは

ヒトパピローマウイルス(Human Papillomavirus : HPV)は、環状二本鎖DNAウイルスです。正二十面体のカプシドで覆われており、約8,000塩基対で構成されています。100種類以上の遺伝子タイプが報告されており、子宮頸がん、肛門周囲がん、陰茎がん、尋常性疣贅,扁平疣贅,尖圭コンジローマ等の疾患に関与していると言われています1)2)
特に子宮頸がんに関しては多くの研究が報告され、がん発症に関与する高リスクHPVと低リスクHPVに分類されています。HPVに感染しても自然消失する場合がほとんどですが、高リスクHPVに感染した細胞の一部はがんに進行します3)4)


HPV感染による癌化のメカニズム

HPVが子宮頚部細胞に感染すると、一部は、子宮頚部上皮内腫瘍(CIN:Cervical intraepithelial neoplasia)又は異形成と称される前駆病変を経て、癌に至ることが明らかになっています3)


HPV癌感染と子宮頸がんへの進行


日本ではどのHPV型が多いか?

MEBGEN™ HPVキットを用いた検討では、頻度が高い順に52型(37.9%)、16型(27.3%)、58型(15.9%)、18型(11.4%)、56型(9.8%)、39型(9.1%)、51型(8.3%)、31型(7.6%)となっています5)


HPVタイピング検査の測定意義

HPVが子宮頸部細胞に持続感染すると、一部の患者において異型細胞が生じ、前癌状態となります。HPVのタイプによって癌化のリスクが異なり、子宮頸癌において高頻度に検出される13種のHPV(16型、18型、31型、33型、35型、39型、45型、51型、52型、56型、58型、59型、68型)は高リスクHPVに分類されています3)
CINと診断された患者において、CIN1又はCIN2からCIN3への進展リスクは、感染しているHPV型により異なることが報告されています6)。そのため、子宮頸部の生検によりCIN1又はCIN2と診断された場合にHPV-DNAの型判別検査を実施し、感染している13種の高リスクHPV-DNAのタイプに応じて以降の治療方針が決定されます。また、13種の高リスクHPV検査の併用は、子宮頸がん検診において、ベセスダ分類によりASC-US(意義不明異型扁平上皮)と診断された患者に対し、コルポ診などによる精査を実施するか経過観察するかを判断するための補助として、日常診療に利用されています7)


2.試薬について

測定原理

PCR-rSSO(polymerase chain reaction-reverse sequence specific oligonucleotide)法は増幅させたPCR増幅産物にビーズやナイロン膜などに固相された配列特異的プローブをハイブリダイズさせ、プローブに標識された蛍光物質などのシグナルを検出する方法です。
本品では、ビーズとフィコエリスリン(PE)の蛍光を測定し検出する方法を用いています。ビオチン標識プライマーで増幅させたPCR増幅産物と蛍光ビーズ上に固相された配列特異的プローブをハイブリダイズさせます。ビーズを洗浄し、蛍光標識タンパク質SA-PE(ストレプトアビジン結合フィコエリスリン)を反応させると、PCR増幅産物は蛍光標識されます。このPEとビーズの蛍光をフローサイトメトリーの原理を応用したLuminexシステムの2種類のレーザーで同時に検出します。


ビオチン標識プライマーを用いて増幅
ビオチン標識プライマーを用いて増幅


PCR増幅産物に配列特異的プローブをハイブリダイズさせ検出
PCR増幅産物に配列特異的プローブをハイブリダイズさせ検出


xMAP® (Luminex®)システム測定原理

Luminex2色マイクロビーズをいろいろな濃度で組み合わせた2色の蛍光色素で染色し、蛍光色素の含有量を識別コードとして用います。

それぞれのビーズに個別の解析対象と結合する物質を固定させ、少量サンプルで多項目を同時に解析することができます。

ビーズには核酸類のほか、抗原・抗体のようなタンパク質なども固定でき、さまざまな実験に用いることができます。


xMAP法(Luminex)を用いたPCR-rSSO法
xMAP®法 (Luminex®)を用いたPCR-rSSO法


※Luminex®、xMAP®はLuminex社の商標です。



測定結果の判定法

Luminexシステムでの測定が正常に終了したこと、ICビーズの測定値が1000以上であることを確認し、HPV-DNA検出ビーズの判定を行います。Luminexシステムでの測定にSample emptyなどの異常がある場合、またはICビーズの測定値が1000未満である場合、判定保留とします。
HPV-DNA検出ビーズのうち、16ビーズ、18ビーズ、31ビーズ、33ビーズ、35ビーズ、45ビーズ、51ビーズ、52ビーズ、56ビーズ、58ビーズ、59ビーズ、68ビーズは測定値が1000以上、39ビーズ(39-1ビーズと39-2ビーズの測定値合計)が2000以上の場合、各ビーズ測定値を陽性と判断し、いずれか1つ以上のHPV-DNA検出ビーズが陽性となった場合に当該検体をHPV-DNA陽性と判定します。なお、各HPV-DNA検出ビーズの陽性、陰性により、各HPV-DNA型の陽性、陰性を判定します。
16ビーズ、18ビーズ、31ビーズ、33ビーズ、35ビーズ、45ビーズ、51ビーズ、52ビーズ、56ビーズ、58ビーズ、59ビーズ、68ビーズの測定値は1000未満、39ビーズの測定値は2000未満の場合、各ビーズ測定値を陰性と判断し、すべてのHPV-DNA検出ビーズが陰性となった場合に当該検体をHPV-DNA陰性と判定します。
下表に各々のHPV-DNA型の単独陽性検体、HPV-DNA陰性検体、ICビーズ陰性例の判定法を示します。複数のHPV-DNA検出ビーズが陽性となった場合は、いずれのHPV-DNA型とも陽性と判定します。


HPV判定
・[+]:陽性、[-]:陰性、[+/-]陽性または陰性を示す。
・ビーズ名称[39]は、39-1ビーズと39-2ビーズの測定値を合計した値を示す。


Luminex解析ソフトウェアUniMAG™により迅速な判定が可能です。


試薬の設計

MEBGEN™ HPVキット
測定原理 PCR-rSSO法


<検出対象HPV-DNA>

13種の高リスクHPV(16型、18型、31型、33型、35型、39型、45型、51型、52型、56型、58型、59型、68型)


検査を行うにあたり指針やガイドラインはあるか?

「産婦人科診療ガイドライン―婦人科外来編2020」
組織診で確認されたCIN1/2(軽度・中等度異形成)の管理・治療について以下のように記載されています。
3.CIN1/2の進展リスク評価のためにHPVタイピング検査を行う場合には、HPV16、18、31、33、35、45、52、58のいずれかが陽性の病変では進展リスクが高いので、それ以外のHPV陽性例あるいはHPV陰性例とは分けて管理する。(B)


HPVタイピング検査は、1度検査した場合、2回目の検査を行う意義はあるか。

細胞診結果またはコルポスコピー等で医師が引き続き病理診断を実施したほうがいいと判断し、病理検査の結果、CIN1またはCIN2と診断された場合に実施します。よって、連続して二回目を行なう意味は少ないと考えられます。
HPV感染の多くは自然消失し、さらにはCIN1/CIN2においてもその多くは自然治癒します。その後の感染経過により時間を経過して細胞診やコルポスコピー等で異常と診断されることがありますので、その際の病理検査結果によりタイピング検査を再度実施することは意味があると考えます。


HPV検査の「スクリーニング検査」と「タイピング検査」について

スクリーニング検査は高リスク型HPV感染の有無を確認する検査です。スクリーニング検査には2種類の試薬があり、感染しているHPV型までは分からない検査と、HPV16型と18型のタイピングと、それ以外の型のHPV感染の有無を確認する簡易タイピング試薬があります。
タイピング検査は感染している高リスクHPV 型を判定する検査です。CIN1/2患者のフォローアップにおいてHPVタイピング検査の結果はリスク評価に有用と考えられています。組織診検査で CIN1、2と判定された場合に検査(保険適用)対象となります。


スクリーニング検査とタイピング検査で結果が乖離することはあるか。

両検査で使用目的は異なりますので単純比較することは難しく、その判断についても一様にはできないことをご留意ください。結果が乖離する原因としては検体採取による影響(採取時期や検体の不均一性など)などが考えられます。例えば、採取時期が違った場合には、採取検体に含まれるHPV量の違いなどが考えられます。
尚、HPV検査だけで検診間隔、治療指針が決められるものではありません。よって、臨床症状、他の検査所見、再検、再検体採取の実施を含めて、医師が判断の上検査結果をご利用いただきたいと思います。
参考までに100例の検体を用いた検討で、スクリーニング検査試薬に対するHPV-DNA検出の全体一致率は97.0%(97例/100例)、陽性一致率は100.0%(47例/47例)、陰性一致率は94.3%(50例/53例)となっています。


HPV-DNA検出の相関スクリーニング検査試薬
陽性陰性
本品陽性47例3例50例
陰性0例50例50例
47例53例100例

全体一致率:97.0%(97例/100例)
陽性一致率:100%(47例/47例)
陰性一致率:94.3%(50例/53例)


GENOSEARCH™ HPV31との違いについて

本品では、高リスク型の13種の16、18、31、33、35、39、45、51、52、56、58、59、68型を判定できますが、研究用試薬GENOSEARCH™ HPV31は、上記13種類の高リスクHPV以外に、6b、11、26、42、44、53、54、55、61、62、66、70、71、73、82、84、90、 CP6108型の合計31タイプを判定することができます。検出感度はGENOSEARCH™ HPV31が1000コピー/反応に対し、本試薬では250コピー/反応と、より高感度な試薬となっています。


測定・解析を実施する際に必要な器具、器材、試薬は?

DNA抽出用試薬
滅菌精製水又はDNA溶解液(1 mmol/L Tris-HCl、0.1 mmol/L EDTA(pH8.0))
クリーンベンチ
マイクロピペット、フィルター付きチップ
増幅反応用PCRプレート
プレートシール、ドームキャップ
サーマルサイクラー(Gold 96-well GeneAmp PCR System 9700、アプライドバイオシステムズVRTi Dx(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)など)
ディスペンサートレイ
プレートミキサー又はボルテックスミキサー
Luminex® 100/200™システム
Luminexシステム測定用プレート
プレートカバー
プレート遠心機
洗浄機      など

測定データ解析時には下記のソフトウェアがあると迅速な判定が可能です。
Luminex®解析ソフトウェアUniMAG™ v2
詳細につきましては当社までお問い合わせください。


検体や試薬についての注意事項

添付文書をよく読んでからお使いください。
<検体>
子宮頸部細胞を測定試料とし、測定試料から抽出したDNAを本品の検体として用います。本品の測定には0.2~400 ng/µLのDNA溶液を5 µL使用します。
子宮頸部細胞は、適切な採取器具(Cervex-ブラシ(株式会社医学生物学研究所)など)を用いて採取し、TACAS™ GYN vial(株式会社医学生物学研究所)などを用いて液状化検体細胞診(Liquid-Based Cytology, LBC)材料としてください。LBC材料から、遺伝子検査に適したDNA抽出試薬(スマイテスト™ EX-R&Dなど)を用いて、DNA抽出を行ってください。
抽出したDNAは、DNaseなどのコンタミネーションを避け、-20℃以下で凍結して保管してください。

<試薬>
異なる製品ロットの試薬を混合したり、組み合わせたりして使用しないでください。また、同一の製品ロットであっても試薬を注ぎ足すことはしないでください。
開封後はなるべく早く使用し、保存する場合は蓋を閉めて指定の貯蔵方法で保存してください。融解後のマスターミックスは-15~-35℃で保存できますが、凍結融解回数は6回以内としてください。Taq DNAポリメラーゼ及びウラシルDNAグリコシラーゼは室温に放置すると失活する可能性がありますので、使用後は直ちに-15~-35℃で保存してください。
13種の高リスクHPV-DNA型すべてにおいて感度、正確性、同時再現性の各試験規格を満たした最小コピー数は、250コピー/反応です。


3.参考文献

  • ウイルス 第56巻 第2号,p.219-230,2006 日本ウイルス学会
  • ウイルス 第58巻 第2号,p.173-182,2008 日本ウイルス学会
  • Munoz N, Bosch FX, de Sanjose S, Herrero R, Castellsague X, Shah KV, et al. Epidemiologic classification of human papillomavirus types associated with cervical cancer. N Engl J Med. 2003;348(6):518-27.
  • 産婦人科診療ガイドライン―婦人科外来編2020 日本産科婦人科学会/日本産婦人科医会
  • 尾崎 聡. 臨床病理. 2012, vol. 60, no. 7, p. 621-626
  • Matsumoto K, Oki A, Furuta R, Maeda H, Yasugi T, Takatsuka N, et al. Predicting the progression of cervical precursor lesions by human papillomavirus genotyping: a prospective cohort study. Int J Cancer. 2011;128(12):2898-910.
  • 井上正樹. 日産婦誌. 2010, vol. 62, no. 9, p. 188-193.

4.関連製品

GS-B0701 MEBGEN™ HPVキット(冷凍品)
GS-B0702 MEBGEN™ HPVキット(冷蔵品)
GS-B0601 GENOSEARCH™ HPV31(冷凍品)
GS-B0602 GENOSEARCH™ HPV31(冷蔵品)
9725 Luminex® 100/200™ システム
9725-130 Luminex®解析ソフトウェア UniMAG™ v2.3


最終更新日:2023年7月