強直性脊椎炎
強直性脊椎炎は,主に脊椎・骨盤(仙腸関節)および四肢の大関節を侵す慢性進行性の自己免疫性疾患です.多くが30歳前の若年者に発症し,頸~背~腰臀部,胸部,さらには股,膝,肩関節など全身広範囲に炎症性疼痛が拡がり,次第に各部位の拘縮(運動制限)や強直(運動性消失)を生じます.このため,身体的のみならず心理的・社会的にもQOLの著しい低下を招き,特に若年者では就学・就労の大きな障壁となります.重症例では,頸椎から腰椎(骨盤)まで全脊椎が後弯(前屈)位で骨性に強直して運動性が消失し,前方を注視できない,上方を見上げられない,後ろを振り向けない,周囲を見回せない,長時間同じ姿勢(立位・座位・臥位)を維持するのが困難になるなど,多彩かつ独特の体幹機能障害が生じます.さらには,このような日常生活上の不便にとどまらず,脊椎骨折やこれに伴う脊髄損傷(麻痺)など外傷発生の危険性も高まります.
遺伝的背景により,我が国の患者数は欧米に比べ極めて少なく,医師の間でも十分に周知されていないため診断が遅れがちとなり,初発から診断までに平均9.3年を要しています.
臨床的特徴
腰背部痛,臀部痛(仙腸関節炎,脊椎炎)
身体各所の靭帯付着部の疼痛,腫脹
四肢の大関節(股,膝,肩など)の疼痛や運動制限
疼痛が運動により軽快し,安静や就寝により増悪するのが特徴である)
参考となる検査所見
HLA-B27