自己免疫性水疱症の検査

自己免疫性水疱症の検査

株式会社 医学生物学研究所

トピックス 〜感染症の標的となるデスモグレイン〜

トピック 〜感染症の標的となるデスモグレイン〜


ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群 (Staphylococcal Scaled Skin Syndrome: SSSS) や水疱性膿痂疹 (とびひ,Bullous impetigo) は,黄色ブドウ球菌が産生する外毒素 (Exotoxin) により引き起こされる水疱性疾患です.ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群は乳幼児や,腎不全または免疫不全を伴う成人で認められ,感染後,外毒素が血流によって全身に運ばれて紅斑,水疱,表皮の剥離 (Nikolsky現象) を引き起こすと考えられています.一方,水疱性膿痂疹は局所的な疾患で,感染部位周囲でのみ水疱が形成されます.外毒素がこれらの疾患の水疱形成に関与することは1970年にすでに報告されていたものの,その発症機序は長い間解明されていませんでした.

近年になり,ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群と落葉状天疱瘡の比較から,1) 病変が皮膚のみで粘膜には認められない,2) 表皮上層で細胞間接着が障害される,3) 表皮細胞の壊死を伴わない,4) 落葉状天疱瘡患者の血清や外毒素を新生仔マウスに投与するといずれも水疱が形成される,という多くの共通点が明らかになりました.A型,B型,D型の外毒素はセリンプロテアーゼとしてDsg1のグルタミン酸残基381のC末端側を切断し,皮膚症状を引き起こすと考えられています.一方,黄色ブドウ球菌の外毒素はDsg3には全く作用せず,ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群の症状が皮膚のみに現れ,Dsg1とDsg3が共に発現する粘膜に病変が見られないという病態を反映していると考えられます (『デスモグレイン代償説』 参照) .自己免疫性皮膚疾患である落葉状天疱瘡と感染症であるブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群で標的分子が同一であったことは,臨床的に非常に興味深い知見です (24,25)