診断および病型分類と自己抗体価
天疱瘡の鑑別診断
天疱瘡患者血清を正常ヒト皮膚に反応させて間接蛍光法染色を行うと,血清中に含まれるIgG自己抗体が表皮の細胞膜表面と反応します.Dsg1,Dsg3の組織分布と患者血清に含まれる自己抗体によって染色パターンが異なりますが,これだけで尋常性天疱瘡と落葉状天疱瘡を鑑別することは困難な場合があります.
MESACUP™-2テスト デスモグレイン1およびMESACUP™-2テスト デスモグレイン3は,固相抗原としてそれぞれリコンビナントDsg1とDsg3を用い,ELISAにより血清中の抗Dsg1抗体と抗Dsg3抗体を測定する試薬です.ELISAで血清中の抗Dsg1抗体および抗Dsg3抗体を高感度かつ特異的に測定することで,天疱瘡の各病型特有の自己抗体プロファイルに基づく血清学的鑑別が可能になりました (26) .
水疱症患者の血清中の抗Dsg1抗体を測定したところ,尋常性天疱瘡で89%(71/80例),落葉状天疱瘡で97%(126/130例)が陽性となりました.一方,抗Dsg3抗体の陽性率は,それぞれ95%(140/147例)と6%(5/80例)でした.
MESACUP™-2テスト デスモグレイン1,MESACUP™-2テスト デスモグレイン3測定結果判定
Index値 | |||
陰性 | ± | 陽性 | |
MESACUP™-2テスト デスモグレイン1*1 | 14未満 | 14以上20未満 | 20以上 |
MESACUP™-2テスト デスモグレイン3*2 | 7未満 | 7以上20未満 | 20以上 |
*1: 健常人血清110例,落葉状天疱瘡患者血清130例および天疱瘡以外の患者血清117例を測定して得た値から設定しました.(±) に判定された場合は,注意深く病気の推移を観察して下さい.
*2: 健常人血清110例,尋常性天疱瘡患者血清147例および天疱瘡以外の患者血清117例を測定して得た値から設定しました. (±) に判定された場合は,注意深く病気の推移を観察して下さい.
※ 上記の値はあくまでも参考値であり,各施設ごとに基準となる数値を設定されることをお勧めします.
*2: 健常人血清110例,尋常性天疱瘡患者血清147例および天疱瘡以外の患者血清117例を測定して得た値から設定しました. (±) に判定された場合は,注意深く病気の推移を観察して下さい.
※ 上記の値はあくまでも参考値であり,各施設ごとに基準となる数値を設定されることをお勧めします.
■ 疾患別抗Dsg1抗体,抗Dsg3抗体測定値
■ 抗Dsg抗体プロファイルによる天疱瘡の病型分類
ELISAを用いて,抗Dsg1抗体,抗Dsg3抗体を高い感度および特異的に測定することにより,天疱瘡の病型の血清学的鑑別が可能になり,それぞれの病型が独自の抗体プロファイルを持つことが明らかにされました.
ELISAを用いて,抗Dsg1抗体,抗Dsg3抗体を高い感度および特異的に測定することにより,天疱瘡の病型の血清学的鑑別が可能になり,それぞれの病型が独自の抗体プロファイルを持つことが明らかにされました.
天疱瘡の病型 | 抗Dsg3抗体 | 抗Dsg1抗体 |
粘膜優位型尋常性天疱瘡 | 陽性 | 陰性 |
粘膜皮膚型尋常性天疱瘡 | 陽性 | 陽性 |
落葉状天疱瘡 | 陰性 | 陽性 |
水疱性類天疱瘡の鑑別診断
MESACUP™ BP180 テストは,固相抗原としてBP180 NC16aのリコンビナントタンパク質を用いており,特異的に血清中の抗BP180抗体を測定するELISA試薬です.活動期の水疱性類天疱瘡患者64例中54例 (84%) で陽性を示しました.
BP230 ELISA Kit*は,固相抗原としてBP230のN末端およびC末端領域の組換えタンパク質を用いた抗BP230抗体測定試薬です.健常人血清から算出した参考正常値をもとに,活動期の水疱性類天疱瘡の患者血清中の抗BP230抗体を測定すると,64例中37例 (58%) で陽性となりました.MESACUP™ BP180 テストにBP230 ELISA Kit*の結果を組み合わせることにより,
活動期および寛解期の水疱性類天疱瘡患者239例のうち232例(97%)で陽性を示すことから,高い臨床的感度を有する診断方法であることが示唆されています (27) .
MESACUP™ BP180 テスト測定結果判定
Index値 | ||
陰性 | 陽性 | |
MESACUP™ BP180 テスト | 9 未満 | 9 以上 |
※ 健常人血清336例,水疱性類天疱瘡患者血清64例および他の水疱性皮膚疾患患者血清111例を測定して得た値から,9以上を陽性と設定しました.
※ 上記の値はあくまでも参考値であり,各施設ごとに基準となる数値を設定されることをお勧めします.
※ 上記の値はあくまでも参考値であり,各施設ごとに基準となる数値を設定されることをお勧めします.
BP230 ELISA Kit*健常人測定値
健常人血清109例を測定し,その99パーセンタイル値を求めたところ,Index値=9.0となりました.
■ 疾患別抗180抗体,抗230抗体測定値
データは久留米大学医学部皮膚科学教室 橋本 隆 教授よりご提供いただきました.
■ 抗BP180抗体・抗BP230抗体の検出感度
活動期 | 寛解期 | 計 | |
MESACUP™ BP180 テスト | 84% (54/64) | 65% (113/175) | 70% (167/239) |
BP230 ELISA Kit* | 58% (37/64) | 78% (136/175) | 72% (173/239) |
MESACUP™ BP180 テスト + BP230 ELISA Kit* |
94% (60/64) | 98% (172/175) | 97% (232/239) |
* BP230 ELISA Kitは研究用試薬です.
後天性表皮水疱症と抗タイプVIIコラーゲン抗体価
Anti-Type VII Collagen ELISA Kit*は,N末端領域NC1およびC末端領域NC2の組換えタンパク質を固相抗原として用いた抗タイプVIIコラーゲン抗体測定試薬です.後天性表皮水疱症の患者血清中の抗タイプVIIコラーゲン自己抗体を測定すると,49例中46例 (94%) で陽性となりました (28).
■ 疾患別抗タイプVIIコラーゲン抗体測定値
■ 疾患別抗タイプVIIコラーゲン抗体測定値
データは慶應義塾大学医学部皮膚科学教室 石井 健 先生よりご提供いただきました.
*1:EBA患者49例と健常人55例のデータからROC解析を行っています.
*1:EBA患者49例と健常人55例のデータからROC解析を行っています.
Anti-Type VII Collagen ELISA Kit*健常人測定値
健常人血清266例を測定したところ下記の結果になりました.
mean = 0.94 (Index)
SD = 1.04 (Index)
mean + 5SD = 6.14 (Index)
SD = 1.04 (Index)
mean + 5SD = 6.14 (Index)
* Anti-Type VII Collagen ELISA Kitは研究用試薬です.