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第22回「自己抗体と自己免疫」シンポジウム

-蛋白翻訳後修飾と自己免疫-
Post-translational modification and autoimmunity

第22回「自己抗体と自己免疫」シンポジウムは終了いたしました。
多数のご参加誠にありがとうございました。
お問い合わせ: koutaisympo@mbl.co.jp
開催日:(2015.2.7 東京)
世話人

山本 一彦 (東京大学医学部 アレルギーリウマチ内科)
髙崎 芳成 (順天堂大学医学部 膠原病内科)
三森 経世 (京都大学 免疫・膠原病内科)
Jack D. Keene (Duke University Medical Center)

世話人

参加ご希望の方はFAX用紙にてお申し込みください。
→ パンフレット・FAX用紙のダウンロード(PDF:693 KB)

講演(14:00 - 16:55)
  1. Twenty years of global messenger RNA regulation
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    座長山本 一彦 (東京大学医学部 アレルギーリウマチ内科)
    演者 Jack D. Keene (Duke University Medical Center)


  2. 蛋白翻訳後修飾、クリプティックエピトープと自己抗体産生
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    座長川上 純 (長崎大学病院 リウマチ・膠原病内科(第一内科))
    演者佐藤 実 (産業医科大学産業保健学部 成人老年看護学講座)


  3. PADI4と関節リウマチ
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  4. 座長村島 温子 (国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター)
    演者庄田 宏文 (東京大学医学部 アレルギーリウマチ内科)


  5. 抗シトルリン化蛋白抗体および抗カルバミル化蛋白抗体の対応抗原
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  6. 座長川野 充弘(金沢大学附属病院 リウマチ・膠原病内科)
    演者大村 浩一郎(京都大学 免疫・膠原病内科)


  7. 自己免疫疾患の新たな標的分子:ミスフォールド蛋白質/MHCクラスII分子複合体
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  8. 座長川人 豊(京都府立医科大学 膠原病・リウマチ・アレルギー科)
    演者荒瀬 尚(大阪大学 免疫学フロンティア研究センター
         免疫化学研究室/微生物病研究所 免疫化学分野)


特別講演(16:55 - 17:55)
Citrullination: from a small protein modification to a major autoantibody response in rheumatoid arthritis
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座長Jack D. Keene (Duke University Medical Center)
演者Ger J. M. Pruijn (Radboud University Nijmegen)



・情報交換会 (18:10 - 19:10)

1. Twenty years of global messenger RNA regulation

Jack D. Keene
Department of Molecular Genetics & Microbiology, Duke University Medical Center, Durham, N.C. 27710 USA
 The field of global mRNA binding and regulation began in 1994 when we developed a recombinant RNP immunoprecipitation-selex (rRIP-Selex) procedure using naturally occurring 3’ untranslated regions (UTRs) of human brain mRNAs (Gao et al., 1994). This procedure used iterative cycles of in vitro selection of the 3’UTR regions brain mRNAs that bound to the neuronal ELAV RNA-binding protein (RBP), Hel-N1 (later called HuB). The results of rRIP-Selex provided the first clear demonstration that RBPs can bind to multiple mRNAs, a fact that had not been previously realized. This led to my interest in how functionally related mRNAs might be coordinately regulated by RBPs and I suggested that RNP complexes are remodeled dynamically during growth and development. To investigate this hypothesis, my lab developed in vivo procedures of RNA immunoprecipitation with high-throughput sequencing using cell extracts and microarrays (Tenenbaum et al., 2000). As expected, mRNA targets of ELAV proteins were highly similar when comparing our in vitro and in vivo procedures. We also anticipated UV and formaldehyde crosslinking RIP procedures now called CLIP and RIP-IT, but found them to be less reliable than the direct RIP-chip/seq method. I will discuss subsequent adaptations of these various mRNA targeting procedures and the advantages and disadvantages of each. I will then describe a more recent adaptation of RIP-seq that overcomes the known limitations of all of these prior methods. This new in vivo adaptation of RIP-seq is ideal for quantifying combinatorial interactions among multiple RBPs globally and paves the way for quantifying functionally related RNAs undergoing RNP remodeling during growth and differentiation.

2. 蛋白翻訳後修飾,クリプティックエピトープと自己抗体産生

佐藤 実
産業医科大学産業保健学部 成人老年看護学講座
 全身性自己免疫性リウマチ性疾患では,細胞内の種々の構成成分に対する自己抗体が産生され,その特異性は,特定の疾患,臨床症状と密接に関連する臨床的に重要なバイオマーカーである.しかし,細胞内の数千に及ぶ蛋白質の中から限られた抗原が自己抗体の標的として選択される機序は不明である.特定の抗原の量的(発現亢進)あるいは質的異常(変異,翻訳後修飾など)がこの選択に関わるというのは魅力的な仮説であるが,実際にこの機序が証明された例は少ない.蛋白質は細胞内の蛋白分解酵素で消化されてペプチドとなり抗原提示細胞表面の主要組織適合遺伝子複合体(MHC) class Iまたはclass II上に提示される.このペプチド-MHC複合体が自己由来か非自己由来と認識されるかが免疫反応が起きるかどうかの重要な起点となる.自己反応性T細胞は除去あるいは不活化されているはずであるが,この過程で発現のない,あるいは少ないペプチド(クリプティックエピトープ)に対する寛容は不十分で,その発現が自己免疫現象の引き金となる可能性が示唆されている.
 翻訳後修飾ではないが,クリプティックエピトープ産生の原因となる体細胞突然変異と自己抗体産生との関連は,腫瘍抑制遺伝子p53の変異を伴う各種癌患者におけるp53に対する自己抗体の産生から示唆されている.近年,悪性腫瘍合併皮膚筋炎とtranscription intermediary factor 1 (TIF1) γに対する自己抗体産生の強い関連が注目されているが,この分子も腫瘍抑制遺伝子でありp53と同様の機序を介しての自己抗体産生の可能性も考えられる.蛋白質の翻訳後修飾に特異的な自己抗体産生は関節リウマチ(RA)におけるシトルリン化されたプロフィラグリン,ビメンチン,フィブリノーゲンなどに特異的な自己抗体(抗シトルリン化蛋白抗体,ACPA)で注目されている.これに対しSLEや他の疾患ではシトルリン化されていないこれらの蛋白やペプチドと反応する抗体が産生される.翻訳後修飾された蛋白質に特異的な免疫反応が特定の疾患と強く関連することは,病因,病態への翻訳後修飾の関与を示唆する.リウマチ性疾患の自己抗体が認識する自己抗原の多くはリン酸化蛋白であるが,SLEや強皮症におけるリン酸化されたRNAポリメラーゼIIに特異的な抗体の産生を除いては,直接リン酸化が自己抗体の反応性に影響することを示すデータは乏しい.
 膠原病における自己抗体産生には免疫学的寛容の破綻に至る一般的な免疫学的異常に加え,標的抗原の選択という重要な要素がある.自己抗体の特異性が臨床診断,特異症状と関連し重要であるので,抗原選択機序の解明が待たれる.蛋白質の翻訳後修飾は抗原の質的変化に関わり,特異自己抗体産生,また疾患の病態に重要な役割を果たす可能性がある.

3. PADI4と関節リウマチ

庄田 宏文
東京大学医学部 アレルギーリウマチ内科
 関節リウマチ(Rheumatoid arthritis, RA)の疾患感受性遺伝子として2004年にPeptidylarginine deiminase type 4 (PADI4) 多型が同定された.PADI4は蛋白シトルリン化酵素であり,RAにおけるシトルリン化自己抗原の生成に関与していると考えられてきた.一方で,PADI4には核内蛋白のシトルリン化による転写制御能があり,またneutrophil extracellular traps (NETs)の産生にもPADI4は必須であるなど,免疫系への広範な影響も推定される.
 我々は,PADI4 knockout (KO)マウスを作成し,関節炎モデルマウスを用いて炎症性関節炎,獲得免疫系におけるPADI4の機能解析を試みた.PADI4 KOマウスではコラーゲン誘導性関節炎(collagen-induced arthritis, CIA), glucose-6-phosphate isomerase (GPI)誘導性関節炎(GIA)の両者において,関節炎の重症度,病理スコア,抗体価が低下していた.CIAにおける関節組織ではPADI4 KOマウスにおいてシトルリン化抗原の消失が確認された.GIAはその発症にIL-6, IL-17, CD4陽性T細胞が必要とされている系であるが,PADI4 KOマウスではGPI免疫後7日目における血清IL-6濃度,所属リンパ節におけるTh17細胞の割合が有意に減少していた.一方で,naïve T細胞のin vitroでのTh17細胞分化については,PADI4 KO T細胞とWild type (WT) T細胞で同等であり,GIAにおけるTh17細胞の減少の要因としてはT細胞外の影響と考えられた.
 GIAにおけるIL-6産生のソースとしてCD11b陽性細胞と報告されている.またPADI4が主に発現している細胞も好中球,単球系細胞である.そこで,我々はGPI免疫後の脾臓,リンパ節における免疫細胞数を測定した.T細胞,B細胞数はWT, PADI4 KOで不変であったが,CD11b+Ly6G+細胞数,Ly6C+細胞数はPADI4 KOマウスで有意に減少がみられた.またCD11b+Ly6G+細胞,Ly6C+細胞におけるBim, Bid発現は亢進していた.In vitroにおける生存実験では,PADI4 KOマウス由来好中球の生存が有意に低下しており,PADI4はこれらの細胞生存を維持するのに重要な役割を果たすと考えられた.
 過去の報告では抗体移入による関節炎の系ではWT,PADI4 KOで関節炎に差はみられなかったとされている.以上の結果より,PADI4は,好中球,単球系細胞の生存を制御することで,これらの細胞を介した関節炎発症前における免疫系へ作用し,抗体産生,T細胞分化など獲得免疫系へ影響を及ぼすことがわかった.詳細な分子機序の解明はこれからの課題であるが,PADI4阻害によるRA治療法の開発は可能性があると考えられる.

4. 抗シトルリン化蛋白抗体および抗カルバミル化蛋白抗体の対応抗原

大村 浩一郎
京都大学 免疫・膠原病内科
 抗CCP抗体の対応抗原はシトルリン化ランダムペプチドライブラリーから関節リウマチ(RA)に対して感度,特異度の高くなるコンビネーションを選択して抗原としたということしか公表されていない.ACPAの対応抗原は抗CCP抗体ELISAキットの対応抗原のみならず,様々なシトルリン化蛋白が含まれ,これまでに20種を超える対応抗原が報告されている.その例として,フィラグリン,ビメンチン,αエノラーゼ,フィブリノーゲン,I型 & II型コラーゲン,EBNA-1,アルドラーゼ,PGK1,Calreticulin,HSP60,BiP,
GPI,MBP,Histone (2A, 2B),Apo Eなどが挙げられる.最近,我々が蛋白アレイを用いた手法(AlphaScreen法)でACPAの対応抗原のスクリーニングを行ったところ,抗CCP抗体陽性患者血清が反応するシトルリン化蛋白は百以上にのぼる.これらのうち,どれがprimaryな対応抗原でどれが交差反応に過ぎないのか,それともシトルリン自身が対応抗原なのか現時点では明らかでない.
 一方,近年カルバミル化蛋白に対する抗体(抗CarP抗体)が脚光を浴びている.ひとつには抗CCP抗体陰性RAの16%に抗CarP抗体が陽性となると報告されており(Shi et al., PNAS 2011),抗CCP抗体陰性RAの新たな診断ツールとして期待されているからである.また,MPOを介した炎症局所でカルバミル化(リシン→ホモシトルリン)が起こりうるということはRAの病態生理を考える上で興味深い.なお,ホモシトルリンとシトルリンは炭素鎖(CH2)が1本長いか短いかの違いのみで極めて酷似したアミノ酸である.抗CarP抗体はカルバミル化ウシ胎児血清(FCS)を抗原として測定されており,その正確な対応抗原についてはいまだ報告がみられない.今回我々はAlphaScreen法という蛋白アレイと発光ビーズを用いた自己抗体検出方法にて抗CarP抗体の対応抗原同定を試みた.
 本シンポジウムでは抗シトルリン化蛋白抗体および抗カルバミル化蛋白抗体の対応抗原について既報告と我々のデータを交えながら紹介する.

5. 自己免疫疾患の新たな標的分子:ミスフォールド蛋白質/MHCクラスII分子複合体

荒瀬 尚
大阪大学 免疫学フロンティア研究センター 免疫化学研究室/微生物病研究所 免疫化学分野
 関節リウマチにおける代表的な自己抗体としてリウマチ因子が古くから知られており,現在でも関節リウマチの診断の重要な指標になっている.リウマチ因子は,変性したIgGに対する自己抗体であるが,病態生理的な標的抗原は明らかでなく,なぜ関節リウマチでリウマチ因子が陽性になるかも明らかでない.IgGは重鎖と軽鎖からなり,重鎖のみでは分泌もされないし,細胞表面にも発現しない.ところが,MHCクラスⅡ分子が存在するとIgG重鎖(IgGH)が単独で細胞表面に出現するようになる.MHCクラスⅡ分子によるIgGHの細胞表面発現は,MHCクラスⅡ分子に結合したペプチドで阻害されるため,IgGHはMHCクラスⅡ分子のペプチド結合部位に結合する.さらに,このIgGH/MHCクラスⅡ分子複合体は,関節リウマチ患者の自己抗体に認識されることが明らかになった.一方,血清中の正常なIgGは認識されない.また,IgGH/MHCクラスⅡ分子複合体に対する自己抗体は関節リウマチ患者に特異的で,健常人や他の疾患でリウマチ因子が陽性になる患者でも検出されない.従って,IgGH/MHCクラスⅡ分子複合体は,関節リウマチの自己抗体の特異的標的抗原であることが判明した.実際,IgGH/MHCクラスⅡ分子複合体は関節リウマチ患者の滑膜組織中に検出されるが,変形性関節症の滑膜組織には認められない.
 関節リウマチの感受性にはMHCクラスⅡ分子が最も深く関与している.そこで,IgGHと種々のHLA-DRとの複合体に対する自己抗体の結合性を解析すると,それぞれのHLA-DRアリルによる関節リウマチの罹りやすさ(オッズ比)とIgGH/HLA-DR分子複合体に対する自己抗体の結合性という全く異なるパラメーターが,非常に高い相関を示した(相関係数0.81).つまり,IgGH/HLA-DR分子複合体を形成しやすいMHCクラスⅡ分子を持っているヒトは関節リウマチに罹りやすいことになる.以上より,IgGH/MHCクラスⅡ分子複合体が自己抗体の標的として関節リウマチの発症に関わっている可能性が考えられた(Jin et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 111: 3787-3792, 2014).
 細胞内ではミスフォールド蛋白質は常に作られているが,通常は細胞内で速やかに分解され,細胞外に運ばれることはない.従って,免疫システムはそのようなミスフォールド蛋白質に寛容になっていないと考えられる.ところが,細胞内のミスフォールド蛋白質が自己免疫疾患に感受性のMHCクラスⅡ分子と結合すると,細胞外に輸送されてしまい,それが異物として自己抗体の標的になっていると考えられる.MHCクラスⅡ分子は,非免疫細胞ではほとんど発現しておらず,IgGを多量に産生するプラズマ細胞もMHCクラスⅡ分子の発現は低い.ところが,感染等の炎症で産生されるIFN-γ等のサイトカインによって,ヒト由来細胞は非常に強くMHCクラスⅡ分子を発現する.従って,MHCクラスⅡ分子陰性細胞にMHCクラスⅡ分子が発現すると,細胞内のミスフォールド蛋白質がMHCクラスⅡ分子によって細胞外へ輸送されてしまい,異物としてミスフォールド蛋白質に対する自己抗体の産生が引き起こされると考えられる.実際,自己免疫疾患は,ウイルス感染等をきっかけとして発病する場合がある.また,多くの自己免疫疾患の標的組織では,異常なMHCクラスⅡ分子の発現が認められる.このように,MHCクラスⅡ分子が誤って細胞内のミスフォールド蛋白質を細胞外へ輸送してしまうことが,関節リウマチを含めて多くの自己免疫疾患の原因ではないかという新たな発症機構が考えられた.

<SPECIAL PRESENTATION>
Citrullination: from a small protein modification to a major autoantibody response in rheumatoid arthritis

Ger J.M. Pruijn
Department of Biomolecular Chemistry, Radboud University, Nijmegen, The Netherlands
 Citrullination and the immune response to citrullinated proteins have been fundamental for the early recognition of rheumatoid arthritis (RA) by serological tests and a better understanding of its pathophysiology. Citrullination is the conversion of peptidylarginine to peptidylcitrulline, which is catalyzed by peptidylarginine deiminases (PADs). Autoantibodies to citrullinated proteins represent the most specific serological marker for RA and play a prominent role in the classification of RA based on the criteria defined in 2010 by EULAR/ACR. Anti-citrullinated protein antibodies (ACPA) are found in approximately 75% of RA patients and can be used to differentiate between two disease entities. The results of multiple studies indicate that ACPA are produced during early stages of RA development, frequently years before the onset of clinical symptoms, and contribute to pathophysiological processes underlying the generation and progression of RA. In this lecture, new methods for the detection of citrullinated proteins will be presented and the substrate specificity of the PAD enzymes will be discussed. Furthermore, the identification and characterization of citrullinated proteins in the inflamed joints of RA patients will be described, as well as the recognition of a subset of these proteins by ACPA from RA patient sera. Although ACPA can be efficiently detected by several assays, e.g. the anti-CCP2 assay, ACPA appeared to represent a heterogeneous group of antibodies showing various reactivity profiles to citrullinated antigens. The results of ACPA fine-specificity profiling performed by surface plasmon resonance imaging will be presented and their clinical meaningfulness will be discussed. Finally, a unique molecular feature of ACPA will be addressed, variable domain glycosylation, which may have important implications for the pathogenic properties of ACPA.