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第20回「自己抗体と自己免疫」シンポジウム

第20回「自己抗体と自己免疫」シンポジウムは終了いたしました。多数のご参加ありがとうございました。
講演録集(B5版:49ページ('13.09発行) )はお問い合わせフォームよりご請求ください。
お問い合わせ: koutaisympo@mbl.co.jp

テーマ: -IgG4関連疾患-

開催日:(2013.2.2 東京)
世話人

山本 一彦 (東京大学医学部 アレルギーリウマチ内科)、髙崎 芳成 (順天堂大学医学部 膠原病内科)
三森 経世 (京都大学 免疫・膠原病内科) 、Jack D. Keene (Duke University Medical Center)

世話人

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→ パンフレット・FAX用紙のダウンロード(PDF:233KB)

講演(14:05 - 16:55)
  1. Emerging concepts of RNA regulation[抄録を見る▼]
  2. Jack D. Keene (Duke University Medical Center)
    講演髙崎 芳成(順天堂大学医学部 膠原病内科)


  3. 自己抗体産生と抗体アイソタイプ[抄録を見る▼]
  4. 鍔田 武志 (東京医科歯科大学 難治疾患研究所 免疫疾患分野)
    講演神澤 輝実 (東京都立駒込病院)


  5. IgG4関連腎臓病[抄録を見る▼]
  6. 佐伯 敬子 (長岡赤十字病院 内科)
    講演槇野 博史 (岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 腎・免疫・内分泌代謝内科学)


  7. 「ミクリッツ病」からみたIgG4関連疾患 ~データベースSMARTから[抄録を見る▼]
  8. 山本 元久 (札幌医科大学医学部 内科学第一講座)
    講演中島 衡 (福岡大学医学部 腎臓・膠原病内科)


  9. 自己免疫性膵炎とIgG4[抄録を見る▼]
  10. 川 茂幸 (信州大学総合健康安全センター)
    講演千葉 勉 (京都大学 消化器内科)

特別講演(16:55 - 17:55)
The treatment of IgG4-related disease:
Emphasis on the effects and efficacy of B cell depletion
[抄録を見る▼

John H. Stone (Harvard Medical School/Massachusetts General Hospital)
講演Jack D. Keene (Duke University Medical Center)

1. Emerging Concepts of RNA Regulation

Jack D. Keene
Department of Molecular Genetics & Microbiology, Duke University Medical Center, Durham, N.C. 27710 USA

 The rapidly expanding fields of RNA transcription and RNA translation are affecting all areas of research because they determine which proteins are made in living cells. Indeed, proteins are the mechanistic forces of all life and gene expression determines these outcomes. Genome-wide analyses, transcriptomics and ribonomics approaches are, in turn, bringing new biological and medical insights into the post-genomic era. For example, recent advances in understanding RNA interference, the functions of microRNAs, and the use of high-throughput ribonomics data from RIP-seq, CLIP and PAR-CLIP can now allow us to identify mRNA targets of regulatory factors such as RNA-binding proteins and microRNAs in cells, tissues and organs. While these tools and technologies are strongly impacting scientific discovery, the medical applications are only beginning to emerge. This lecture will illustrate recent advances in the development of ribonomics technologies and discuss many of the insights derived from them that are advancing medically important cellular responses and diseases.

2. 自己抗体産生と抗体アイソタイプ

鍔田 武志
東京医科歯科大学 難治疾患研究所 免疫疾患分野

 種々の自己免疫疾患では抗体産生の異常が認められ,その一部は疾患発症に関わる.疾患発症に関わる抗体としては,自己抗体産生が重要である.主にマウスを用いた研究で,自己反応性Bリンパ球が種々の分化段階でのトレランスメカニズムにより排除・不活化されることが示されている.しかしながら,どのような自己トレランスの破綻が自己免疫疾患の発症に関わるかについては不明の点が多い.CD40L分子はSLEなどの自己免疫疾患で過剰に発現することが示されている.CD40Lを過剰発現するCD40Lトランスジェニックマウスでは,老化とともにSLE様の自己免疫疾患を発症する.CD40L過剰によりこれまでに知られているトレランス機序に異常は来たさないが,これまでに知られていなかった,辺縁帯Bリンパ球のアポトーシスというトレランス機構に異常を来たし,その結果SLEでの疾患特異性の高い自己抗体である抗Sm抗体の産生がおこることが明らかとなった.この知見により,自己抗体の特異性により異なる機序のトレランスが誘導され,特定の異常によりその破綻が誘導されることが明らかとなった.このような制御により,特定の自己抗体産生が特定の病態でおこるものと考えられる.

 IgGにはヒトではIgG1, IgG2, IgG3, IgG4の4つのサブクラスがあり,マウスではIgG1, IgG2a (またはIgG2c),IgG2b, IgG3の4つのサブタイプがあり,それぞれ異なるC領域遺伝子を用いている.それぞれのサブクラスにより物理化学的性質が異なるとともに,エフェクター機能も異なる.ヒトではIgG1とIgG3が補体の活性化や貪食細胞へのオプソニン化能が高く,炎症誘導能が高い.一方,IgG2およびIgG4はエフェクター活性に乏しい.また,IgGサブクラスの産生はサイトカインによって制御され,例えばIL-4はマウスIgG1およびヒトIgG4の産生を強く誘導する.さらに,IgGはその他の免疫グロブリンクラスと同様,抗体として機能するとともにBリンパ球の抗原受容体としても機能する.IgGはIgMやIgDに比べて強いBリンパ球活性化能を有し,記憶応答における迅速で大量の抗体産生に関わるとされている.しかし,IgGサブクラス間で抗原受容体のシグナル伝達に差異があるかはまだ不明である.IgGサブクラスと自己免疫疾患の関連については,マウスIgG3が低温で凝集するクリオグロブリン活性が高く,IgG3自己抗体の疾患誘導性が高いことが示唆されている.一方,ヒトではIgG4高値を示すIgG4関連疾患が注目されているが,IgG4はエフェクター活性が低く,炎症誘導能は高くない.IgG4関連疾患ではTh2活性の増強が示されているため,結果的にIgG4の上昇を引き起こしているのか,あるいはIgG4の何らかの性状が疾患に関与するのか今後の解明が必要である.

3. IgG4関連腎臓病

佐伯 敬子
長岡赤十字病院 内科

 IgG4関連疾患の腎病変の主体は間質性腎炎(tubulointerstitial nephritis; TIN)であるが,糸球体病変や腎盂病変の合併もあることから,最近ではそれらを含めIgG4関連腎臓病(IgG4-related kidney disease; IgG4-RKD)と呼称している.今回はここ数年で明らかになってきたIgG4-RKDの臨床,病理像について概説する.

【臨床像】中高年男性に好発する.自覚症状に乏しく腎機能異常,腎画像異常で偶然発見される例が多い.
IgG4関連の腎外病変を高頻度に合併する.

【検査所見】高IgG,IgG4血症はほぼ必発で,高IgE血症,低補体血症も高頻度である.抗核抗体,RFはしばしば陽性だが疾患特異的自己抗体は通常陰性.ANCA陰性.

【画像所見】腎画像異常を伴いやすく,CTで腎実質の多発性造影不領域,びまん性腫大,単発性腫瘤,内腔不整を伴わない腎盂壁の肥厚などを認める.

【病理所見】線維化を伴う間質への著明なリンパ球,多数のIgG4陽性形質細胞浸潤が基本病理像であり,線維化は自己免疫性膵炎にみられるstoriform fibrosis類似の形態をとる.この他,好酸球浸潤,領域性分布,腎被膜を超える細胞浸潤,高度の線維化などが特徴的で診断に有用である.逆に高度の尿細管炎,壊死性血管炎,肉芽腫,好中球浸潤は殆どみられない.病変部の尿細管基底膜に免疫複合体沈着を認める.糸球体病変を伴う症例もあり膜性腎症が最も多い.

【治療】ステロイドが有効で,治療後1か月以内にほとんどの症例で腎機能低下,腎画像異常ともある程度改善する.回復した腎機能はステロイド維持療法下で比較的長期間維持されるが,腎萎縮が進行する例は多く,また再燃もありうる.

4. 「ミクリッツ病」からみたIgG4関連疾患〜データベースSMARTから

山本 元久,高橋 裕樹,篠村 恭久
札幌医科大学医学部 内科学第一講座

【背景/目的】
 ミクリッツ病(Mikulicz's disease: MD)は,原因不明に両側性,対称性に涙腺・唾液腺腫脹を呈する慢性炎症性疾患である.高IgG4血症,罹患腺組織に著明なIgG4陽性形質細胞浸潤と特徴的な線維化を呈することから,現在は,IgG4関連涙腺・唾液腺炎と位置づけられている.2009年に実施された厚生労働省の全国疫学調査では,わが国に1,100〜4,300名のMD患者がいると推定されている.私たちはデータベースSMART(Sapporo Medical university And Related institutes database for investigation and best Treatments of IgG4-related disease)を構築した.これをもとに,MDおよびその不全型(片側性や,涙腺または唾液腺単独病変)の臨床像をより明確化し,日常診療に役立つ情報を発信していきたい.

【方法】
 2012年7月の時点でSMARTに登録され,現在もフォローしているMD67名,その不全型32名をあわせた99名を対象とした.性差,年齢分布,涙腺・唾液腺以外の臓器障害,悪性腫瘍の合併,ステロイド治療および免疫抑制剤併用,寛解および再燃率を解析した.

【結果】
 性差は女性が52.5%を占め,ほぼ1:1であった.患者の平均年齢は64.3歳で,60歳代が最も多く(全体の37.6%),60歳以上が全体の約3/4を占めた.涙腺・唾液腺以外の臓器障害を有する患者の割合は65.7%であった.最も多かったのは後腹膜線維症で25.8%に認められた.次いでⅠ型自己免疫性膵炎(22.6%),IgG4関連腎臓病(16.1%),肺・気道病変(15.1%)を認めた.MDまたはMD不全型診断前2年以内の悪性腫瘍の既往,診断確定以降の合併は7.1%に認められた.非ホジキンリンパ腫1例,固形癌が8例であった.ステロイド治療は81.8%の患者で行われていた.ステロイドの平均治療量は,プレドニゾロン(PSL)換算5.6mg/日であった.PSL 3〜5mg/日の投与群が38.6%と最も多かった.一方,PSL 11mg/日以上も8.0%存在した.免疫抑制剤の併用率は9.1%で,アザチオプリンが多かった.治療寛解率は73.7%,薬剤フリー率は6.1%であった.一方,再燃率は16.2%で,涙腺・唾液腺の再燃と他の臓器障害での再燃が半数ずつであった.

【結論】
 データベースSMARTをもとに,MDおよびその不全型の臨床像を解析した.MDの診断においては,多彩な臓器障害および悪性腫瘍の合併に留意する必要性が示された.また治療に関しては,ステロイド漸減中に再燃する例も少なくはなく,他の臓器で再燃する可能性があり,全身評価が必要であると考えられた.

5. 自己免疫性膵炎とIgG4

川 茂幸
信州大学総合健康安全センター

1.自己免疫性膵炎とは
 自己免疫性膵炎は自己免疫学的機序が想定される膵臓の慢性炎症である.高齢・男性に好発し,閉塞性黄疸で初発することが多い.通常の膵炎と比較して強度の腹痛を呈することはまれである.血液検査では閉塞性黄疸に関連した異常と免疫グロブリンの上昇,非特異的自己抗体であるANAやRFの陽性化,補体の低下を認める.IgG4の上昇を高率,特異的に認め診断ならびに活動性の評価に有用である.画像検査では膵腫大と膵管の狭細化を認め,閉塞性黄疸も高率に認めることにより,膵癌との鑑別困難例が存在する.病理組織像では著明なリンパ球・形質細胞浸潤と線維化を認め,lymphoplasmacytic sclerosing pancreatitis (LPSP)と呼称される.IgG4陽性形質細胞浸潤も特徴的である.ステロイド治療が奏功し,臨床症状,検査所見,画像所見が速やかに改善する.長期経過で膵石形成をきたす症例が存在し,通常の慢性膵炎と同様の病態に移行する可能性も指摘されている.また,膵癌をはじめとする各種悪性腫瘍の合併も報告されていて,注意深く経過観察することが肝要である.涙腺・唾液腺炎,硬化性胆管炎,後腹膜線維症など全身諸臓器の病変を合併することが明らかになってきた.これらの膵外病変は膵病変と同様の組織所見,ステロイド反応性を示し,共通の病態が背景に存在すると考えられ,膵病変・膵外病変を統括した全身性疾患「IgG4関連疾患」が提唱された.自己免疫性膵炎はIgG4関連疾患の膵病変とも,捉えることが可能である.一方,欧米より好中球浸潤を特徴とする自己免疫性膵炎が報告されていて,IgG4とは関連せず,本邦で報告されているものとは異なっている.

2.IgG4について
 IgG4は自己免疫性膵炎症例の80%以上で,血清値の上昇を認め,病変組織にIgG4陽性形質細胞浸潤を認めることより,本症の病態に深く関連していることが推測される.血清値測定は診断,膵癌との鑑別,経過観察に有用であり,IgG4陽性形質細胞浸潤は病理診断の有用な指標となっている.ただし,その働き,病因的意義については未だ明らかになっていない.他のIgGサブクラスとは異なる特異な性質として,Fab arm exchangeとRF様活性がある.前者はIgG4分子がヒンジ部分で乖離し,異なる抗原認識をするhalf molecule同士が再結合することにより,同一分子が異なる抗原決定基を認識するようになることである.後者はIgG4がFcを介して,他のIgG サブクラスのFc部分と反応することである.いずれの生理的意義も不明であるが,障害性というより防御的役割を担っているのではないかと推測されている.

<SPECIAL PRESENTATION>
The treatment of IgG4-related disease:
Emphasis on the effects and efficacy of B cell depletion

John H. Stone
Harvard Medical School/Massachusetts General Hospital
Rheumatology Unit / Yawkey 2, 55 Fruit Street, Massachusetts General Hospital, Boston, MA. 02114 USA

 IgG4-related disease (IgG4-RD) is a multi-organ system disease first recognized in modern times by Japanese investigators. However, cases of historical patients with syndromes that are clearly recognizable now as IgG4-RD are traceable back to the late 1800s, and it is likely that the disease is in fact much older. In the modern period of this disease, crucial observations have included the recognition of autoimmune pancreatitis (AIP; once termed lymphoplasmacytic sclerosing pancreatitis); the identification of the association between AIP and elevated serum IgG4 concentrations; and the realization that essentially every organ in the body can be affected by IgG4-RD.

 IgG4-RD is similar to sarcoidosis in that regardless of the organ affected, the histopathological features are strikingly similar across tissues. The hallmark pathology findings include a lymphoplasmacytic infiltrate in which a high percentage of plasma cells stain for IgG4; a distinctive, "storiform" fibrosis; obliterative phlebitis; and a mild to moderate eosinophil infiltrate. Serum IgG4 concentrations are elevated in a majority of patients with IgG4-RD, but not all. The prozone effect, leading to spuriously low assay results, explains some patients with IgG4-RD who appear to have normal IgG4 concentrations in their blood, but a sizeable minority of patients have truly normal serum levels despite classic histopathologic and immunostaining features in tissue.

 Nearly all patients with IgG4-RD respond quickly to glucocorticoid therapy, provided that the treatment is initiated in the cellular rather than the fibrotic stage of disease. The natural history of many IgG4-RD patients during glucocorticoid therapy, however, is to experience disease flares after or during tapers and to require either long-term maintenance therapy. Few data on the utility of conventional steroid-sparing agents exist.

 Early experience with B cell depletion has shown encouraging results. All patients treated at the Massachusetts General Hospital with clearly active inflammation (as opposed to fibrosis) at the time of treatment have achieved swift clinical responses to rituximab, an anti-CD20 monoclonal antibody. Responses to therapy have included prompt declines in serum IgG4 concentrations; the rapid shrinkage of tumefactive organ lesions; and the ability to taper prednisone successfully. Some patients have required re-treatment following B cell reconstitution, but others have maintained steroid-free remissions following one course of rituximab therapy. Mechanistic studies performed to date in IgG4-RD promise to yield important insights about the pathophysiology of this disease and the pathways through which B cell depletion exerts its beneficial effects. The results likely have broader implications for the overall function of the immune system in some circumstances.