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第19回「自己抗体と自己免疫」シンポジウム

第19回「自己抗体と自己免疫」シンポジウムは終了いたしました。多数のご参加ありがとうございました。
講演録集(B5版:61ページ('12.09発行) )はお問い合わせフォームよりご請求ください。
お問い合わせ: koutaisympo@mbl.co.jp

テーマ: -自然免疫と自己免疫疾患-

開催日:(2012.2.18 東京)
世話人

山本 一彦(東京大学医学部 アレルギーリウマチ内科)、高崎 芳成(順天堂大学医学部 膠原病内科)
三森 経世(京都大学 免疫・膠原病内科)、Jack D. Keene(Duke Univ. Medical Center)

世話人

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→ パンフレット・FAX用紙のダウンロード(PDF:279KB)

講演(14:05 - 16:55)
  1. How posttranscriptional gene regulation affects the immune system[抄録を見る▼]
  2. Jack D. Keene (Duke University Medical Center)
    講演山本 一彦 (東京大学医学部 アレルギーリウマチ内科)

  3. 関節リウマチ発症におけるTLRや補体の役割[抄録を見る▼]
  4. 橋本 求 (京都大学医学部附属病院 リウマチセンター)
    講演横田 俊平 (横浜市立大学大学院医学研究科 発生成育小児医療学)

  5. 死細胞処理による免疫制御[抄録を見る▼]
  6. 田中 正人 (東京薬科大学 生命科学部 免疫制御学研究室/
    理化学研究所 免疫アレルギー科学総合研究センター 自然免疫研究チーム)
    講演窪田 哲朗 (東京医科歯科大学 保健衛生学研究科)

  7. コレステロール、動脈硬化、そして自然免疫炎症[抄録を見る▼]
  8. 河野 肇 (帝京大学医学部 内科学講座)
    講演尹 浩信 (熊本大学大学院 皮膚病態治療再建学分野)

  9. 全身性エリテマトーデスにおけるTLRの役割[抄録を見る▼]
  10. 天野 浩文 (順天堂大学医学部 膠原病内科)
    講演山中 健次郎 (佐々木研究所附属杏雲堂病院 内科・リウマチ科)

特別講演(16:55 - 17:55)

Neutrophil extracellular traps in infection and autoimmunity [抄録を見る▼]

Arturo Zychlinsky (Max Planck Institute for Infection Biology)
講演Jack D. Keene (Duke University Medical Center)

1. How Posttranscriptional Regulation Affects the Immune Response

Jack D. Keene
Department of Molecular Genetics & Microbiology, Duke University Medical Center, Durham, North Carolina USA

 RNA regulation has recently emerged as a major aspect of gene regulation in the immune system due to the realization that global effects of RNA-binding proteins (RBP) and noncoding RNAs (ncRNA) like microRNAs strongly influence the outcome of cytokines, chemokines and growth regulatory protein production. Our laboratory demonstrated that messenger RNAs (mRNA) are coordinately regulated in mammalian cells following responses to environmental factors and differentiation signals, including inflammation and T cell activation. Previously, we proposed the posttranscriptional RNA Operon/Regulon theory of coherent gene regulation that has been recently demonstrated in yeast, nematode, protozoan, insect, plant and animal cells as well. I will report recent findings using RIP-chip/seq, high-throughput Solexa sequencing and RNA interference that reveal how ELAV/Hu RBPs and ncRNAs can coordinate gene expression during activation of T cells as a prelude to investigating the effects of Human Immunodeficiency Virus (HIV) infection on RNA regulation. I will describe how quantitative changes in mRNA stability, mRNA-binding, microRNA/RISC-binding and translation of protein can be integrated to gain insights into T cell responses during activation. These results demonstrate that functionally related populations of mRNAs representing RNA Regulons play a major role in coordinating responses of T cells to antigenic presentation, and predictably, to HIV infection.

2. 関節リウマチの発症におけるTLRや補体の役割

橋本 求
京都大学医学部附属病院 リウマチセンター

 関節リウマチ(RA)などの自己免疫疾患には、遺伝因子と環境因子がかかわるとされるが、RAの発症にかかわる環境因子については依然不明である。
 本研究では、RAに酷似した関節炎を自然発症する動物モデル(SKGマウス)を用いて、自己免疫性関節炎の発症における環境因子の役割を検討した。SKGマウスは、T細胞レセプター伝達系の主要分子であるZAP70の点突然変異により、CD4T細胞依存性の関節炎を自然発症する。この関節炎は、IL-17を欠損すると発症しなくなることから、IL-17産生ヘルパーCD4T細胞(Th17細胞)依存性の関節炎である。興味深いことに、SKGマウスは、通常の飼育環境下では関節炎を自然発症するが、微生物学的に清潔な環境下(例;SPF環境下)におくと、関節炎を発症しなくなる。しかし、SPF環境下でも、細菌や真菌の壁構成成分であるβ-glucanやmannanなどを投与することにより、関節炎が惹起された。β-glucanやmannanは、Toll様受容体(TLR)やDectin-1などの細胞表面上のレセプターを介し樹状細胞やマクロファージを活性化し、IL-6などの産生を亢進させることで、Th17細胞分化を促進する。加えて、β-glucanやmannanは、血清中の補体(レクチン経路や代替経路)を活性化し、その結果産生される主要な補体活性化産物C5aが、マクロファージに作用してIL-6などのサイトカイン産生を著明に亢進させ、Th17細胞分化をさらに促進する。C5a受容体を欠損したSKGマウスでは、mannanやβ-glucanによるTh17細胞分化や関節炎の発症が抑制された。以上の結果から、細菌や真菌の感染は、TLRや補体などのinnate immunityを活性化させることにより、Th17細胞の分化・増殖を誘導し、自己免疫性関節炎の発症を誘導しうる可能性が示された。
 ヒトRAの発症におけるinnate immunityの役割については未だ不明であるが、近年、RAの発症との相関を指摘されている歯周病菌の感染は、細菌由来のシトルリン化酵素をもち、蛋白シトルリン化を促進してRA発症に寄与するだけでなく、TLRや補体などのinnate immunityを活性化させることが知られている。また、ヒトRAにおいても、その病初期にはTh17細胞が関与することが報告されている。歯周病などによる細菌や真菌の感染は、TLRや補体などのinnate immunityの活性化を介するTh17細胞の誘導により、ヒトRA発症に関与している可能性が考えられる。

3. 死細胞処理による免疫制御

田中 正人
東京薬科大学 生命科学部 免疫制御学研究室/ 理化学研究所 免疫アレルギー科学総合研究センター 自然免疫研究チーム

 生体内では、不要細胞や有害な細胞は細胞死により排除されるが、その死骸はマクロファージ等の食細胞により速やかに貪食される。この食細胞による死細胞貪食は、単に死骸の除去による周囲組織の恒常性維持に寄与するだけでなく、死細胞付随抗原に対する多様な免疫応答に関与していることが明らかになってきた。すなわち食細胞は死細胞を貪食すると、リソソーム内で死細胞を分解し、生じたペプチドを抗原提示することによりT細胞応答を制御していると考えられている。
 我々はこれまでに、食細胞が死細胞を選択的に貪食する分子メカニズムについて研究を行ってきた。そして、死細胞貪食が自己に対する免疫寛容の維持に重要な役割を果たしていることを明らかにした。さらに、当該疾患の原因抗原を発現させた死細胞を経静脈的に投与し、食細胞に貪食させることにより、自己免疫疾患動物モデルであるexperimental autoimmune encephalomyelitis (EAE)の発症を阻止できることを示した。これらの知見は、死細胞貪食により積極的に抗原特異的免疫寛容が誘導されることを示している。
 最近我々は、死細胞を貪食した食細胞が、寛容とは逆に抗原特異的な免疫活性化を誘導する場合があることを示した。そしてこの免疫活性化ががん免疫誘導に応用できることを示すとともに、この誘導に関与するリンパ節在住の死細胞貪食マクロファージを同定した。これらの知見は、死細胞貪食が貪食する死細胞の特性、食細胞の種類、およびその貪食の時空間的状況に応じて多彩な免疫応答を誘導することを示している。
 本講演では、死細胞貪食に伴う多様な免疫応答とそれを担う特殊なマクロファージに関する我々の知見を発表する。

4. コレステロール、動脈硬化、そして自然免疫炎症

河野 肇
帝京大学医学部 内科学講座

 動脈硬化はその炎症性疾患としての側面が注目されている。近年の研究により、自然免疫はその炎症において中心的な役割を果たしていることが判明してきた。なかでも様々な刺激によるpattern recognition receptors (PRRs)による炎症の開始と持続は重要な役割を果たしていることが報告された。Scavenger受容体はリポ蛋白の回収を行い、マクロファージがfoam細胞へと分化するのに重要な機能を果たし、Toll like受容体は内因性のdanger signalを認識し、炎症性サイトカインの産生並びに抗原特異的な炎症を導くと考えられる。
 コレステロール結晶は進展した粥状硬化巣に認められ、コレステロール蓄積の最終形態と考えられていた。しかしわれわれは、動脈硬化巣におけるコレステロール結晶はその発症早期から存在すること、コレステロール結晶はin vitroにおいてNLRP3インフラマソームを活性化すること、またin vivoにおいてもNLRP3インフラマソームの活性化を通じてIL-1依存性に動脈硬化の進展に関与していることを示した。
 HDLは動脈硬化抑制効果を有しているが、その抗炎症効果については明らかではなかった。われわれは、reconstituted HDL (rHDL)の投与によりin vitroにおいてコレステロール結晶や他のインフラマソーム活性化因子に対するサイトカイン産生が抑制されることを見いだした。さらにrHDLの投与によりTLRリガンドとD-Galactosamineによるin vivo肝炎モデルにおいても肝障害の減弱が認められ、rHDLに抗炎症効果があることが明らかとなった。

5. 全身性エリテマトーデスにおけるTLRの役割

天野 浩文
順天堂大学医学部 膠原病内科

 膠原病・リウマチ性疾患は、多彩な自己抗体の産生と多臓器障害を特徴とするが、中でも全身性エリテマトーデス(SLE)は、その病態形成に自己のDNAあるいはRNAに対する自己抗体が関与する。Toll-like receptor (TLR)は、自然免疫をはじめとして様々な疾患との関与が知られているが、膠原病・リウマチ性疾患においてもTLRの関与が強く疑われている。SLEのモデルマウスであるBXSBマウスにおいて、疾患を促進させるYaa (Y-linked autoimmune acceleration)遺伝子変異は、Pisitkunら(2006 Science)とSubramanianら(2006 Proc Natl Acad Sci USA)の研究により、本来X染色体上に存在するtlr7, tlr8をはじめとする十数個の遺伝子を含む領域が、Y染色体上に転座し維持されてきたものであることが明らかにされその重要性が示された。自己免疫疾患モデルマウスにおけるTLR7あるいはTLR9の欠損は、抗Sm抗体や抗dsDNA抗体などの自己抗体の産生を変化させることが知られている。MRL/Mplpr/lprマウスでTLR9を欠損させた際には、血清中の抗核抗体のHomogeneousパターンは著明に減少し、抗DNA抗体価は落とすものの、Speckled染色パターンの変化はなく、糸球体腎炎は改善することはなかった。対照的にTLR7を欠損した際には、リンパ球の活性化が抑えられ腎炎は改善したと報告されている(Christensenら 2006 Immunity)。これらからSLEによる腎炎では、TLR7とTLR9をはじめとするTLRによる刺激が自己抗体プロファイルと病態形成をコントロールしている可能性がある。
 FcγRIIBはB細胞の活性化を負にフィードバックする重要な免疫制御分子である。このFcγRIIBを野生型C57BL/6(B6)マウスで欠損したB6.FcγRIIB-/-マウスでは、リウマトイド因子(RF)の出現と関節破壊を生じ関節リウマチ(RA)の病態を呈した(Sato-Hayashizakiら 2011 Arthritis Rheum)。我々はこのマウスにTLR7の重複であるYaa遺伝子を導入することで病態の変化が生じるかを調べるためにB6.FcγRIIB-/-Yaaマウスを作製した。B6.FcγRIIB-/-Yaaマウスでは、B6.FcγRIIB-/-、B6、B6.Yaaマウスと比較し有意に抗ds-DNA抗体の上昇を認めた。このマウスでRFはB6マウスと比較して上昇していたが、B6.FcγRIIB-/-、B6.Yaaマウスとは同程度であった。6ヶ月齢では半数が蛋白尿を認め、腎組織ではSLE様の糸球体腎炎を呈し50%生存率は約7カ月であった。このことからRAとSLEでは共通の遺伝的背景が存在し、TLRを介する自然免疫系の関与が疾患特異性をも左右させている可能性がある。

<SPECIAL PRESENTATION>
Neutrophil extracellular traps in infection and autoimmunity

Arturo Zychlinsky
Max Planck Institute for Infection Biology

Neutrophils are key effectors of innate immunity that are known to engulf and kill bacteria when granules rich in antimicrobial molecules discharge their contents into the phagosome. We describe a novel neutrophil structure that disarms and kills bacteria extracellularly. Upon activation, neutrophils release Neutrophil Extracellular Traps (NETs) which are formed of chromatin and other neutrophils proteins. The release of NETs is through a novel form of cell death, also called "netosis" that depends on the activation of the NADPH oxidase as well as Myeloperoxidase and the translocation of Neutrophil Elastase from the granules to the nucleus of neutrophils. NETs bind and kill Gram positive and negative bacteria as well as fungi. Lack of NETs leads to immunodeficiency. NETs are not appropriately regulated in patients with some autoimmune diseases like, for example, Systemic Lupus Erythematosus. Hence, NETs represent an attractive target for therapy in autoimmune diseases.