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自己免疫疾患検査

IgG4関連疾患から腎機能を守るために~腎病変を見逃さないための診療指針~

監修 金沢大学附属病院 リウマチ膠原病内科
科長 川野 充弘 先生

IgG4関連疾患とは
IgG4関連疾患とは、全身のあらゆる臓器にびまん性もしくは限局性に、腫大、腫瘤、結節もしくは肥厚を呈する全身性の疾患です。血清IgG4は高値(135 mg/dL以上)を示し、組織にはIgG4陽性形質細胞とリンパ球の顕著な浸潤が見られます。
診断には、包括診断基準のほか臓器別診断基準が用いられます。ステロイドに対する反応が非常に良好で、ステロイド治療が奏功します。
腎病変を見逃さない
IgG4関連腎臓病患者にみられる他臓器病変 IgG4関連腎臓病のステロイドに対する反応は良好です。しかし、治療が遅れると腎機能は完全には回復せず部分的な腎萎縮が残る場合があります。また、IgG4関連腎臓病の患者は、多くの場合、他臓器病変を伴います。CTやMRIによる全身の慎重な評価が重要です。
反対に、他臓器にIgG4関連疾患を認める患者の中にも腎病変の合併リスクがあることを考慮して、慎重にフォローすることが重要です。
IgG4関連腎臓病患者にみられる他臓器病変
ステロイドにより治療が奏功したとしても、症例によっては腎の部分的な瘢痕状の萎縮が認められる場合があります(上右図)。
その場合、腎機能の回復は限定的となります。
腎機能の回復には早期診断、早期治療が重要となります。
IgG4関連腎臓病診療指針を用いて適切な診断を
IgG4関連疾患の診断基準には、包括診断基準と6つの臓器別診断基準があります。
「IgG4関連腎臓病診療指針」は、病変の特徴、臨床検査所見を取り入れることにより、IgG4関連腎臓病を見逃すことなく診断することを目的として策定されました。

1.自己免疫性膵炎臨床診断基準2011
2.IgG4関連ミクリッツ病の診断基準
3.IgG4関連硬化性胆管炎臨床診断基準2012年
4.IgG4関連腎臓病診療指針
5.IgG4関連呼吸器疾患診断基準
6.IgG4関連眼疾患の診断基準

本指針の詳細はコチラ
IgG4関連腎臓病を疑うべき症状と血清IgG4値の測定
IgG4関連腎臓病患者にみられる他臓器病変 基本的には、造影CTなどの画像所見で腫大・腫瘤など次ページに示すような腎病変を認めます。
しかし、腎臓では腫大・腫瘤がはっきりしないことがあり、腎機能低下や尿所見異常のある高齢者に高IgG血症、低補体血症や高IgE血症を認めた場合、IgG4関連疾患を疑って血清IgG4値を測定する必要があります。

*特に低補体血症は、IgG4関連尿細管間質性腎炎の50%以上に認められ、腎病変と関連の深い検査所見です。

他臓器のIgG4関連疾患から腎病変を疑うポイント
● 低補体血症を伴っている(C4だけでなく、C3の値も低い)
● eGFRが60 mL/min/1.73m2 以下で、蛋白尿や腎萎縮を認めない
再燃マーカー にもなりうる「低補体血症」
再燃マーカー にもなりうる
「低補体血症」
活動期に低補体血症を認めた症例では、再燃時にも補体が低下し、再燃のマーカーとなることがあります。
鑑別疾患
臨床上鑑別を要する疾患には、多発血管炎性肉芽腫症(旧名:Wegener肉芽腫症)、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(旧名:Churg-Strauss症候群)、多中心性キャッスルマン病などがあります。
画像診断において鑑別を要する疾患には、悪性リンパ腫、尿路上皮癌、腎梗塞、腎盂腎炎、サルコイドーシス、癌の転移などがあります。
多発血管炎性肉芽腫症、 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症 鑑別のポイント
IgG4関連腎臓病では、壊死性血管炎や著明な肉芽腫を合併することはない。
ANCA関連血管炎では血尿や赤血球円柱の存在が役立つ場合がある。
多中心性キャッスルマン病 鑑別のポイント
多中心性キャッスルマン病との鑑別で有効な血清検査は血清CRP濃度であり、キャッスルマン病では持続的にCRP高値となる。
組織学的検査では多中心性キャッスルマン病では線維化に乏しいこと、IgG4/IgG比率が40%を超えないことなどがIgG4関連疾患との相違点である。
IgG4関連疾患における腎病変
IgG4関連疾患の腎病変には、IgG4関連腎臓病と呼ばれる腎実質もしくは腎盂に病変を持つものと、腹部大動脈周囲/後腹膜病変により水腎症をきたすものがあります。 腎実質病変の代表は尿細管間質性腎炎です。基本的には、膵臓などの他臓器病変と同様に、造影CTなどの画像検査で腫大・腫瘤に相当する多発性造影不良域や腎機能に不釣り合いな腎腫大を認めます。(画像所見や病理所見では、病変部と非病変部の境界が明瞭であるという特徴があります。)
腎病変の典型的CT像
腎病変の典型的CT像

出典:日本腎臓学会「IgG4関連腎臓病 診療指針 ダイジェスト版」

腎尿細管間質に認める特徴的な組織所見
腎尿細管間質に認める特徴的な組織所見

写真提供:金沢大学附属病院 リウマチ膠原病内科 科長 川野 充弘 先生

IgG4関連腎臓病診断のためのアルゴリズム
「IgG4関連腎臓病診療指針」では、IgG4関連腎臓病を見逃すことなく診断するために、腎機能に関する検査所見や腎臓以外の臓器の病理所見が診断基準項目に取り入れられました。

<IgG4関連腎臓病の診断基準>

Definite、Probableを対象とする。

 

A.診断項目
① 尿所見、腎機能検査に何らかの異常を認め、血液検査にて高IgG血症、
  低補体血症、高IgE血症のいずれかを認める。

② 画像上特徴的な異常所見(びまん性腎腫大、腎実質の多発性造影不良域、
  単発性腎腫瘤(hypovascular)、腎盂壁肥厚病変)を認める。
③ 血液学的に高IgG4血症(135 mg/dL以上)を認める。
④ 腎臓の病理組織学的に以下の2つの所見を認める。
   a.著明なリンパ球、形質細胞の浸潤を認める。
     ただし、IgG4/IgG陽性細胞比40%以上、又はIgG4陽性形質細胞が10/HPFを超える。
   b.浸潤細胞を取り囲む特徴的な線維化を認める。
⑤ 腎臓以外の臓器の病理組織学的に著明なリンパ球、形質細胞の浸潤を認める。
    ただし、IgG4/IgG陽性細胞比40%以上、又はIgG4陽性形質細胞が10/HPFを超える。

 

B.鑑別疾患
1.臨床的な鑑別疾患:多発血管炎性肉芽腫症、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症、形質細胞腫など
2.画像診断上の鑑別疾患:悪性リンパ腫、腎癌(尿路上皮癌など)、腎梗塞、腎盂腎炎、多発血管炎性肉芽腫症、サルコイドーシス、癌の転移など

 

<診断のカテゴリー>(ただしB.鑑別疾患を鑑別する。)
診断のカテゴリー

厚生労働省ホームページ 2018年6月時点


IgG4関連腎臓病 診療指針 ダイジェスト版
<付記>

1. 臨床上鑑別を要する疾患をあげる。多発血管炎性肉芽腫症、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症、
   extramedullary plasmacytomaなど。
2. 画像診断において鑑別を要する疾患を上げる。悪性リンパ腫、腎癌(尿路上皮癌等)、腎梗塞、
 腎盂腎炎(まれに多発血管炎性肉芽腫症、サルコイドーシス、癌の転移など)。
3. 診断のためのアルゴリズムで疑いとなる症例は診断基準では、準確診群もしくは疑診群に分類される。

 

● 腎臓以外の臓器でIgG4-RDと確診されている場合には、腎生検が実施されていなくても
  IgG4関連腎臓病と診断ができ得る
● IgG4関連腎疾患の場合、疾患が腎臓のみであることは稀である
● IgG4関連疾患は経過中に新たな臓器病変が出現することが高頻度で起こること、
  腎機能の低下は急速に進んだ場合機能回復が望めない場合があることより、腎臓に病変を認めなくても
  IgG4関連腎臓病の新たな出現に注意し、画像検査と血清クレアチニン値などを定期的にチェックする
  ことが重要である
● 腎実質もしくは腎盂に病変を持たなくても、腹部大動脈周囲炎・後腹膜線維症により水腎症をきたす
  場合もあり注意が必要である



◎ 広い測定範囲を保持しています。再現性に優れています。
◎ IgG4のカットオフ値135 mg/dLが設定された臨床研究ではThe Binding Site社の試薬が用いられています。