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自己免疫疾患検査

IgG4関連眼疾患 診断のポイント

監修 金沢大学大学院医学系研究科
視覚科学・眼科学
講師 高比良 雅之 先生

IgG4関連眼疾患では涙腺炎がよく知られていますが、涙腺炎以外でも三叉神経(特に眼窩下神経)腫大、外眼筋炎、視神経症、肥厚性強膜炎や、さらには眼窩を越えて鼻腔・副鼻腔や頭蓋内に伸展する症例なども報告されています。血清中のIgG4値が他のIgG4関連疾患同様に高値となる一方、病理組織では花筵様線維化や閉塞性静脈炎はほとんど見られないなど他のIgG4関連疾患と異なる点も認められ、その診断には注意が必要です。
今回、IgG4関連眼疾患の診断のポイントについて解説します。
主訴

両眼瞼腫脹、複視、視力障害、視野障害、眼球突出、ドライアイ



眼窩リンパ増殖性疾患1,014例の解析例


眼窩リンパ増殖性疾患のおよそ1/4はIgG4関連眼疾患でした。
IgG4関連眼疾患219例の年齢の中央値は62歳で、性差はありませんでした。

Japanese study group of IgG4 related ophthalmic disease. Jpn J Ophthalmol. 2013: 57: 573-579.



病変部位別頻度


IgG4関連眼疾患の病変部位は涙腺にとどまらず、三叉神経、外眼筋、眼窩内組織、眼瞼等にもみられます。 特に三叉神経分枝である眼窩下神経と眼窩上神経の腫大は高頻度にみられる所見です。

Sogabe Y, et al:Graefe‘s Archive for Clinical and Experimental Ophthalmology 2014: 252: 531–538.

包括診断基準と臓器別診断基準の相違点
病理組織所見に関する主な相違点は、以下のとおりです。

1) IgG4関連疾患に特徴的な、花筵様線維化(storiform fibrosis)あるいは渦巻き様線維化(swirling fibrosis),閉塞性静脈炎(obliterative phlebitis)は、涙腺の病理では稀です。

2) 包括診断基準におけるIgG4陽性細胞数>10個/HPF(強拡大視野)の条件は、涙腺では少なすぎます。
一方で第1回IgG4関連疾患国際会議での議論を経て作成された病理診断基準(Deshpande V, et al. Mod Pathol. 2012; 25: 1181-92.)において、涙腺では>100個/HPFという条件が提示されましたが、後の検証で多すぎることが判明しました。従って、眼疾患の診断基準では>50個/HPFが採用されています。

3) IgG染色が強陽性となり判定不可能な例もみられることより、IgG4/IgG 細胞比が40%以上との基準は、「且つ」ではなく、「または」に改められました。

<IgG4関連疾患包括診断基準>

以下のDefinite、Probableを対象とする。


1.臨床的に単一又は複数臓器に特徴的なびまん性あるいは限局性腫大、腫瘤、結節、肥厚性病変を認める。
2.血液学的に高IgG4血症(135mg/dL以上)を認める。
3.病理組織学的に以下の2つを認める。
  a.組織所見:著明なリンパ球、形質細胞の浸潤と線維化を認める。
  b.IgG4陽性形質細胞浸潤:IgG4/IgG陽性細胞比40%以上、かつIgG4陽性形質細胞が10/HPFを超える。


<診断のカテゴリー>
Definite:1+2+3を満たすもの
Probable:1+3を満たすもの
Possible:1+2を満たすもの


ただし、できる限り組織診断を加えて、各臓器の悪性腫瘍(癌、悪性リンパ腫など)や類似疾患(シェーグレン症候群、原発性/二次性硬化性胆管炎、キャッスルマン病、二次性後腹膜線維症、多発血管炎性肉芽腫症、サルコイドーシス、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症など)と鑑別することが重要である。

また、比較的生検困難な臓器病変(膵、胆道系、中枢神経、後腹膜、血管病変など)で、十分な組織が採取できず、本基準を用いて臨床的に診断困難であっても各臓器病変の診断基準を満たす場合には診断する。


厚生労働省ホームページ 2018年6月時点


<IgG4関連眼疾患の診断基準>

…日本眼科学会ホームページをご覧ください


鑑別が重要となる疾患
疾患名参考になる情報
Sjögren症候群血清IgG4は正常、抗核抗体、抗SS-A/SS-B抗体
リンパ腫 MALTリンパ腫との鑑別が最も重要で、通常MALTリンパ腫の病理ではIgG4染色陰性であるが、 IgG4染色陽性のMALTリンパ腫もあるため注意が必要
サルコイドーシス 眼サルコイドーシスの主病変は眼内、病理では肉芽腫
多発血管炎性肉芽腫症
(Wegener肉芽腫)
PR3-ANCA、MPO-ANCA
甲状腺眼症 甲状腺機能検査、甲状腺自己抗体
細菌・真菌感染による涙腺炎や
眼窩蜂窩識炎
起因菌の同定、発熱や圧痛
黄色肉芽腫 ときに高IgG4血症を伴う
特発性眼窩 血清IgG4は正常


◎ 広い測定範囲を保持しています。再現性に優れています。
◎ IgG4のカットオフ値135 mg/dLが設定された臨床研究ではThe Binding Site社の試薬が用いられています。