自己免疫性水疱症の検査

自己免疫性水疱症の検査

株式会社 医学生物学研究所

類天疱瘡群

類天疱瘡群
概要
類天疱瘡群は,全身性の緊満性水疱を特徴とする疾患で,組織学的に表皮下水疱を認め,免疫学的には抗表皮基底膜抗体が検出されます.患者血清中に主にIgGクラスの自己抗体が認められ,表皮基底膜部にはIgGならびに補体成分C3の線状沈着が認められます.類天疱瘡群の代表的な疾患である水疱性類天疱瘡 (Bullous pemphigoid:BP) における自己抗体の標的抗原は,基底細胞と基底板との間に構築されているヘミデスモソームに局在する180 kDaの細胞膜タンパク質BP180 (BPAG2,タイプXVIIコラーゲン) ,および230 kDaの細胞質内タンパク質BP230 (BPAG1) です.その他の類天疱瘡群の疾患における自己抗体の抗原として,後天性表皮水疱症 (Epidermolysis bullosa aquisita:EBA) のタイプVIIコラーゲン,粘膜類天疱瘡 (Mucous membrane pemphigoid:MMP) における標的抗原の1つであるラミニン332 (ラミニン5,エピリグリン),線状IgA水疱性皮膚症 (Linear IgA bullous dermatosis:LAD) の97 kDa タンパク質 (BP180の分解産物) などが知られています.また近年,p200類天疱瘡 (Anti-p200 pemphigoid) の抗原として,ラミニンγ1が報告されています (9-11)

臨床的特徴

水疱性類天疱瘡 (BP)
高齢者に好発し,一般に著明な掻痒を伴った緊満性の水疱が多発することを特徴とする疾患です.病理組織学的には表皮下水疱と水疱内および真皮に好酸球浸潤を認めます.粘膜侵襲は20%程度と,尋常性天疱瘡などに比べるとその頻度は少ないことが知られています.
水疱性類天疱瘡の亜型として,妊娠中や産褥期の女性で発症する妊娠性疱疹 (Herpes gestationis: HG) があります (12) .水疱性類天疱瘡同様,水疱内および真皮への好酸球浸潤が認められ,また表皮基底膜部においてIgG自己抗体や補体成分C3の線状沈着も検出されます.以前は妊娠性疱疹(HG)因子と呼ばれていましたが,現在ではこれが補体結合性のIgGクラスの抗表皮基底膜部抗体であることがわかっています.一般的に,妊娠性疱疹は分娩後まもなく自然に軽快しますが,出産の度ごとに再発することも多い皮膚疾患です.
粘膜類天疱瘡 (MMP)

病変の一部に瘢痕が形成されるという病態から瘢痕性類天疱瘡 (Cicatricial pemphigid) と呼ばれていましたが,必ずしもすべての症例で瘢痕を伴うわけではないことから現在は粘膜類天疱瘡という名称が一般的になっています.口腔粘膜や眼粘膜が侵される水疱性疾患で,水疱性類天疱瘡と同様に表皮基底膜部にIgG (時にIgAやIgM) あるいは補体成分C3の沈着が認められます.標的抗原から,水疱性類天疱瘡と同様の抗原を認めるBP型や,基底膜に局在するラミニン332を抗原とするラミニン332型などに分類されます (13,14)

後天性表皮水疱症 (EBA)
基底板と真皮をつなぐ係留線維 (Anchoring fibril) の成分であるタイプVIIコラーゲンに対するIgGクラスの自己抗体の存在が特徴の自己免疫性の皮膚疾患です.機械的刺激で生じる水疱を主な症状とし,四肢などの外力がかかりやすい部位に頻発します.また,治癒後に萎縮性瘢痕や稗粒腫の形成が認められます.病理組織学的には表皮下水疱を認め,炎症を伴う場合にはさらに病変部に白血球の浸潤が認められます.表皮基底膜部には,IgGの沈着が認められます (15)
ジューリング疱疹状皮膚炎 (Dermatitis herpetiformis [ Duhring ])

非常に強い掻痒感を伴う小水疱が全身,とくに肘頭,膝蓋,腰部,肩甲部などに好発します.蛍光抗体法で真皮乳頭部にIgA抗体の顆粒状沈着を認められます.対応抗原はしばらく不明でしたが,近年,トランスグルタミナーゼに対するIgA抗体の免疫複合体が確認されています.また,グルテン除去食で症状が改善されるという報告があります(16)

線状IgA水疱性皮膚症 (LAD)
10歳未満に発症する小児型 (小児慢性水疱症) と40歳以上に発症する成人型に分類されます.ジューリング疱疹状皮膚炎と同様に,掻痒感を伴う紅斑および緊満性水疱が全身に生じますが,直接蛍光抗体法で基底膜部にIgAの線状沈着を認め,また,患者血清中にIgAクラスの自己抗体が検出されます.その抗原としてBP180の細胞外領域を主とする分解産物 (97 kDa) などが報告されています (17)
p200類天疱瘡 (Anti-p200 pemphigoid)
水疱性皮膚疾患の中で,乾癬の合併が多いことが特徴とされる疾患です.検出される自己抗体の対応抗原が分子量200 kDaのタンパク質であることから,p200類天疱瘡と表記されていました.最近,その抗原がラミニンγ1であることが判りました (11)