間接蛍光抗体法による抗核抗体写真集

その他の染色像

HEPANAにおける“rods and rings (RR)”染色に関する考察

HEPANAの検体検索において、細胞質に「棒状」や「リング状」の特異蛍光を認めるパターンがあります。

これは論文などで発表されている、細胞質の「棒および輪」“cytoplasmic rods and rings (RR)”と呼ばれるもので、最近の知見において、慢性のC型肝炎患者血清に特異的に見られる染色であることが明らかとなりました。

中でもC型肝炎患者にペグインターフェロン(pegylated Interferon/PEG-IFN)とリバビリン(ribavirin/RBV)の併用治療を行っているC型肝炎患者群に高率に見出されます(逆に治療を受けていない患者で確認されたという報告はまだありません)。

RRを構成するタンパク質は細胞骨格系のものとは全く異なり、DNA,RNA合成においてCTPやGTPの合成経路で働くCTPS1, IMPDH2といったタンパク質により形成されていることがわかっています。この構造物はCTPもしくはGTP合成経路が阻害されることで出現することが知られており、HEp-2細胞でもCTPS1の阻害剤やIMPDH2の阻害剤でRRの形成を誘導できることが報告されています。

C型肝炎患者の治療で使用されるリバビリンは実はIMPDH2の阻害薬であり、治療を受けたC型肝炎患者においてもRRを形成した細胞が存在している可能性があります。RRがなんらかの形で暴露されることで、体内でRRに対する自己抗体が産生されてきているものと想定されます。

一方、HEPANAのHEp‐2細胞にRRが形成されてくる機序ですが、RRの形成はCTP, GTP合成経路の阻害の他、栄養飢餓状態(グルコースの不足)やアザイドの添加、ある種のキナーゼ阻害剤でも誘導されることが報告されています。HEPANAのHEp-2細胞については、細胞培養に使用するウシ血清のロット差でRRの形成の有無が分かれることから、栄養状態が原因でRRの形成が誘導されているものと考えられます。血清の差により栄養状態や増殖スピードは異なりますので、細胞が飢餓になりやすい血清で培養された場合にはRRの形成が促進されるものと推察されます。【文献76-80