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間接蛍光抗体法による抗核抗体写真集

抗細胞質抗体の染色像

細胞質には細胞活動のエネルギーを供給するミトコンドリアや、タンパク質合成の場となるリボソーム、分泌顆粒をつくるゴルジ体、細胞の消化機能をもったライソソームなどの小器官があります。また紡錘体と中心体は細胞分裂の制御に重要な役割を果たしています。さらに細胞骨格は細胞質内にネットワークを形成し、細胞の形態を維持するとともに、細胞運動にかかわっています。
これらを構成するタンパク質や、細胞内酵素などと反応するさまざまな自己抗体が見いだされており、抗細胞質抗体と呼ばれています。

細胞小器官の抗原を認識する自己抗体

抗ミトコンドリア抗体


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ラット腎・胃切片の像。腎では尿細管 (遠位管が強く染まる) の細胞質が染色され、胃では壁細胞が強く染色される [フルオロ AID-1 テスト (Code. No. 4250)]

染色型 細胞質全体に顆粒が網状にひろがって染色される。
対応抗原 ミトコンドリアM2 … 内膜のピルビン酸脱水素酵素 (PDH-E2) など
他にM1、M3〜M9の亜型があるが、本項に示したものはM2による像である。
確認法 蛍光抗体法ELISA、WB法、CLEIA
臨床的意義 PBCで特異的かつ高率 (90%以上) に出現する。AMAの中で、抗ミトコンドリアM2抗体は最もPBCに特異的で高率に出現する。PBCの診断基準に含まれている。
文献 53、54

抗リボソーム抗体


photo 46

photo 47
ラット腎・胃切片の像
腎の尿細管がびまん性に染色されるが、胃では主細胞が染色される (抗ミトコンドリア抗体では壁細胞が染色される) [フルオロAID-1テスト (Code. No. 4250)]

染色型 細胞質が均質に染色される。核小体も同時に染色される。
対応抗原 リボソーム60S粒子の3種のリン酸化タンパク質 P0 (38kD)、P1 (19kD)、P2 (17kD)、28SリボソームRNA、L12タンパク質など
確認法 蛍光抗体法DID法、WB法、免疫沈降法
臨床的意義 SLE-CNSループスに高率に出現する。
文献 55、56、57

抗Jo-1抗体


photo 48    AF/CDC-10*

染色型 細胞質の細かな顆粒状の染色が特徴とされるが、強く染まる例は少ない。
AF/CDC-10のコントロール血清も通常の希釈倍率ではほとんど染まらない。Jo-1抗原が細胞質と核の両方に存在するという報告もある。
対応抗原 ヒスチジル-tRNA 合成酵素 (tRNAの3'-OH基にヒスチジンを結合させる反応を触媒)
確認法 DID法ELISA、免疫沈降法、CLEIA
臨床的意義 PM/DMに特異的で、本抗体陽性例は肺線維症と多発関節炎を合併する頻度が高い。抗アミノアシルtRNA合成酵素抗体 (抗Jo-1抗体を含む) 陽性が、厚労省自己免疫疾患に関する調査研究班 (2015年) で改定されたPM/DMの認定基準項目のひとつになっている。
文献 258

* Centers for Disease Controlのコントロール血清


抗Jo-1抗体 (ヒスチジル-tRNA合成酵素) 以外にもPM/DMで出現するアミノアシルtRNA合成酵素に対する自己抗体 (抗ARS抗体) が知られている。【文献59,74, 75
抗PL-7抗体 … スレオニル-tRNA合成酵素
抗PL-12抗体 … アラニル-tRNA合成酵素
抗OJ抗体 … イソロイシル-tRNA合成酵素
抗EJ抗体 … グリシル-tRNA合成酵素
抗KS抗体…アスパラギニルtRNA合成酵素

なお抗SRP抗体によっても細胞質が細かく密な顆粒状に染色される。粗面小胞体とリボソームに結合するシグナル認識粒子 (Signal Recognition Particle) の54kDタンパク質に対する自己抗体で、PM/DMに特異性が高い。本抗体陽性の場合、治療に抵抗し再燃を繰り返す例が多い。【文献60

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抗ライソソーム抗体


photo 49

染色型 細胞質全体に点在する大きめの顆粒が染色される。
対応抗原 ライソソームのタンパク質。ライソソーム内酵素のカテプシンやLAMPs (Lysosome-associated membrane protein) などの可能性があるが、明確ではない。
臨床的意義

SLEでの出現例があるが明確な臨床的意義はない。

文献 1、2

抗ゴルジ体抗体


photo 50

染色型 細胞質内で核に沿った断続的な染色を認める。
対応抗原 ゴルジ体の230kDタンパク質など。
97kDタンパク質 (golgin-97) や200kDタンパク質 (非筋細胞ミオシン) が報告されている。
臨床的意義 SLE・SSなどにまれに出現する。golgin-97は2次性SSに特異的とされる。
文献 61、62

細胞小器官関連その他

以下のような細胞質の密〜粗な染色も対応抗原の特定はできませんが、様々な細胞質内小器官を構成するタンパク質、小胞内の酵素、あるいは小胞に取り込まれた分泌物や分解物質に対する自己抗体の存在を示しています。photo 54は細胞周期と関連すると思われます。



photo 51
細胞質全体に密な染色

photo 52
よりやや粗い染色


photo 53
ミトコンドリア抗体類似だが顆粒が異なる

photo 54
一部の細胞の細胞質が染色される



SLE: 全身性エリテマトーデス, SSc: 全身性強皮症, MCTD: 混合性結合組織病, SS: シェーグレン症候群, 
PM/DM: 多発性筋炎/皮膚筋炎, RA: 関節リウマチ, PBC: 原発性胆汁性肝硬変, AIH: 自己免疫性肝炎